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2022.02.02 病原体

モデルナ製での追加接種はどうなの? ―オミクロン株に対する有効性と副反応 著者:渡辺 彰

 

オミクロン株が急拡大する中、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの追加接種がやや低調です。ファイザー製かモデルナ製の選択可能な自治体が多く、モデルナ製の副反応が多いようだとする報道を受けて迷っている方もおられるようですが、実際の抗体価や有効性、副反応はどうなのでしょうか?

モデルナ製ワクチンmRNA-1273の追加接種後のオミクロン株に対する中和抗体価は、1か月後にピークとなって2回目の接種後より高く、6か月後には1/6以下に低下するものの、2回目の接種7か月後の値より格段に高いレベルです(1)。実臨床では、mRNAワクチン(ファイザー製もしくはモデルナ製)の追加接種によるワクチン効果を変異株別に見た英国の成績があります(2)。オミクロン株では、ファイザー製を2回接種して2~4週後の発症予防効果が60%強で、25週後には10%前後にまで低下していましたが、3回目としてファイザー製を接種した1~4週後に70%弱、5~9週後に60%弱に回復しました。一方、ファイザー製を2回接種し、3回目にモデルナ製を接種した例では1週後に80%弱、2~9週後に70%強に回復しています。どちらも十分な結果ですが、1・2回目の接種と同様、モデルナ製の方が若干高い値です。副反応はどうでしょうか?

1回目と2回目の接種後の副反応は、ファイザー製よりモデルナ製がやや多いとする報告が多いものの、リンパ節腫脹を除けば差は僅少で、内容はほぼ同じです。3回目の接種に関しては、1回目から3回目まですべてモデルナ製を接種した22万名強における副反応について、2021年11月19日の米国ACIP(Advisory Committee on Immunization Practice:予防接種実践諮問委員会)が検討しており、その資料を厚生労働省の審議会が引用しています(3)。日本の大規模接種や職域接種でモデルナ製を2回接種した方々が3回目もモデルナ製を接種する場合に相当しますが、2回目の接種に比べて3回目の接種では、何らかの接種部位反応、何らかの全身性反応、何らかの健康への影響、日常生活に支障、仕事に支障、のいずれもが有意に減少していました。

副反応(特に全身性)の半数前後は、いわゆる不安や思い込みによって発現するノセボ効果である(4)という報告もあります。異なるワクチンの接種は免疫獲得の面で有益という報告(5)もありますし、副反応のほとんどは1~3日で改善・消失しますから、ファイザー製であれモデルナ製であれ、早めに追加接種を終えましょう。

(著者:東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授/公益財団法人宮城県結核予防会 理事長 渡辺 彰)

〔文献〕
(1)Pajon R et al:SARS-CoV-2 omicron variant neutralization after mRNA-1273 booster vaccination. New Engl J Med. Jan 26, 2022. DOI: 10.1056/NEJMc2119912
(2)UK Health Security Agency:SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England, Technical briefing: Update on hospitalisation and vaccine effectiveness for Omicron VOC-21NOV-01 (B.1.1.529) . Dec 31, 2021
https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1045619/Technical-Briefing-31-Dec-2021-Omicron_severity_update.pdf
(3)厚生労働省、第27回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会:追加接種でモデルナ社ワクチンを用いることの安全性(2021年12月16日開催の資料より).
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/uploads/052c185163506560d49d2242b76c217ea61925c9.pdf
(4)Haas JW et al:Frequency of adverse events in the placebo arms of COVID-19 vaccine trials; A systematic review and meta-analysis. JAMA Netw Open 2022 Jan 4;5:e2143955. [Epub ahead of print]
(5)Stuart ASV et al:Immunogenicity, safety, and reactogenicity of heterologous COVID-19 primary vaccination incorporating mRNA, viral-vector, and protein-adjuvant vaccines in the UK (Com-COV2): a single-blind, randomised, phase 2, non-inferiority trial. Lancet 399:36-49,2022(Jan 18,2022)

著者プロフィール

渡辺 彰(わたなべ あきら)

東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授
公益財団法人宮城県結核予防会 理事長

日本感染症学会専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会指導医。東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発寄附研究部門教授・日本感染症学会理事・日本結核病学会理事長・日本化学療法学会理事長を歴任。2013年、結核医療とインフルエンザ医療に関する貢献で第65回保健文化賞,2017年、抗インフルエンザ薬の臨床開発とインフルエンザ感染症対策の推進への貢献で日本化学療法学会の第28回志賀 潔・秦 佐八郎記念賞を受賞している。

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