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2021.07.19 病原体

開業医から見たコロナ禍の外来診療 著者:中浜 力

 

2021年7月までのこの1年半は開業医にとってもまさに激動の日々であり、手探りでの発熱外来診療であった。特に個人防護具が底をつき始めた時は、ヘアードライアーを内蔵した45℃、30分間のマスク乾燥器を自作して、スタッフ全員の急場を凌いだのも今は懐かしい思い出である。

新型コロナPCRの外注検査が可能になったのは2020年11月で、それまではコロナ疑い患者のPCR検査依頼を保健所に電話することが主業務であった。しかし、私の第1例目は8月21日である。高血圧と糖尿病の80歳男性が呼吸不全になり、両側びまん性陰影を認め大学病院に緊急入院したが、3週間後に亡くなった。男性の妻はPCR陽性であったが、自宅療養で回復した。この時は、前日までWeb視聴していた感染症学会の情報が非常に診断の役に立った。

自院で外注PCR検査を始めてすぐに数例のコロナ陽性患者を経験したが、12月24日にはPCR検査機器(ID NOWTM)が届いた。これはone step処理で13分間で結果が出る機器で、まさか卒後42年目にPCRを自院で出来る日がくるとは想像したこともなく、真新しい機器を前にして感動したことを覚えている。それから年末までの4日間で4例の陽性例が出た。そして翌4月には2台目を購入した。

この8か月間の自院でのPCR陽性患者は124名で、死亡例は4名であり、内1名は健康な30代女性であった。陽性患者の主体はやはり無節操な若者群と昼カラオケに行くような無理解な高齢者群であり、主たる感染経路もやはりマスク無しの会食である。

記憶に残っているのは、第4波の最盛期の4月8日に1日で15例の陽性患者が出たが、夜診で4例連続で陽性患者が出た時は、一瞬「PCRが壊れているのでは?」と冷汗が出たことである。その他にも、明日ドイツ行きという24歳の女性が陽性になった時は思わず再検査をしたり、仕事用陰性証明を希望した人で3名の陽性患者も経験している。また医療機関職員10名を検査した際に、陽性患者の胃内視鏡をした医師と看護師だけが陽性を示し感染経路が明確となったこともあった。

ところで、開業医がPCR機器を持つ最大の利点は「診断の迅速性」である。ウイルス量が多い発症直後の早期診断は、感染拡大抑制を早める効果が大きい。また、例え陰性結果でも、患者の精神的不安をいち早く解放することができる。さらに副次的効果として、種々の患者の入院依頼時に「20分前のPCRが陰性です。」と伝えると、迅速な受け入れに非常に有効である。

これは医師独りの発熱外来の雑録であるが、ここまでやってこられたのは献身的なスタッフのお陰と感謝をするのみである。

著者プロフィール

中浜 力(なかはま ちから)

医療法人中浜医院 院長

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