ワクチンを信じておらず、「私は接種しない!」と豪語する人がいます。その方針は適切なのでしょうか? ワクチンの有効性を確認していただければ、豪語できないと思います。ここではワクチンの有効性と重要性について解説したいと思います。
まず、新型コロナウイルスに感染した場合、年齢が高くなるに従って重症化しやすいことを確認してください。重症化する人の割合は60歳代以下で0.3%ですが、60歳代以上で8.5%となります。死亡する人の割合は50歳代以下で0.06%ですが、60歳代以上で5.7%となっています(1)。すなわち、65歳以上の重症化や死亡を予防することが極めて重要であり、そのため、65歳以上の高齢者が優先されて接種されます。
それでは、ワクチンの有効性はどの程度でしょうか? 65歳以上の成人でのワクチンの有効性についての解析では、「ワクチンは新型コロナウイルス感染症による入院を大きく減少させる」ということが明らかになりました。その効果は完全接種者(2回接種してから、14日以上経過した人)では94%の有効性だったのです。部分接種者(初回接種から14日以上経過し、2回目接種から14日未満の人)であっても、有効性は64%でした(2)。
それでは、比較的年齢が若い人での有効性はどうでしょうか? 3,950人の医療従事者や救急隊の隊員などを対象とした研究では、完全接種者での有効性は、新型コロナウイルスの感染に対して90%でした。部分接種者であっても有効性は80%でした(3)。
ワクチンを接種すれば100%感染しないのかというと、そうではありません。極くまれに、完全接種者が新型コロナウイルスに感染することがあります。これを「ブレイクスルー感染」と言います。ただ、ブレイクスルー感染の人は無症状か軽症であり、それだけでなく周囲の人々にウイルスを伝播させないことが明らかになっています(4)。
このように、新型コロナウイルスワクチンは極めて有効性が高く、接種した人の感染予防や重症化予防のみならず、周囲の人々へのウイルス伝播も大きく減少させるので、是非とも接種すべきです。
(著者:浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野 邦夫)
〔文献〕
(1)厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の”いま”についての11の知識
https://www.mhlw.go.jp/content/000749530.pdf
(2)Tenforde MW et al:Effectiveness of Pfizer-BioNTech and Moderna vaccines against COVID-19 among hospitalized adults aged ≥65 years — United States, January–March 2021
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/pdfs/mm7018e1-H.pdf
(3)Thompson MG et al:Interim estimates of vaccine effectiveness of BNT162b2 and mRNA-1273 COVID-19 vaccines in preventing SARS-CoV-2 infection among health care personnel, first responders, and other essential and frontline workers — Eight U.S. Locations, December 2020–March 2021
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/pdfs/mm7013e3-H.pdf
(4)Teran RA et al:Postvaccination SARS-CoV-2 infections among skilled nursing facility residents and staff members — Chicago, Illinois, December 2020–March 2021
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/pdfs/mm7017e1-H.pdf