飲食店の時短営業にともない、都市部では路上飲酒が問題となっています。店の閉店後、そのまま仲間同士で路上にて飲み続けるという行為です。おそらく、屋外であればコロナに感染することはない、という誤った認識ゆえに、このような行為がなされていると推測されます。
コロナウイルスは飛沫感染します。感染者から1m以内で、マスクを着用せずに15分以上会話をすれば濃厚接触者ということになります(1)。それは屋内外関係ありません。飲酒すると会話が弾んで、大声で話をしたり、叫んだりすることがあることでしょう。このときに大量の飛沫が口や鼻から飛び出し、感染者から1m未満にいる人々に到達します。その飛沫を吸い込むことによって感染するのです。感染者すべてが何らかの症状があるとは限りません。無症状の感染者もいるし、発症する前日で無症状ではあるけれど大量のウイルスを拡散している感染者もいます。彼らは、自分が感染していることに気付いていないからこそ、そこで飲酒しているのです。
確かに、屋外であることは、屋内に比較して、飛沫やエアロゾルが急速に空気によって薄められるので、感染する機会としては少なくなります。しかし、1m未満の距離までお互いに近寄り、大声を発すれば、屋外であっても感染してしまうのです。すなわち、路上(あるいは公園など)なら開放空間だから問題なし、と思い込むのは誤った判断と言えます。そこで集団での飲酒がなされれば、クラスターは容易に発生することでしょう。
現在、英国型変異株などのように、従来株に比較して感染力の強いコロナウイルスが流行しています。また、第4波によって、自分の周囲にいる人々のなかに感染者が紛れ込む確率は高くなっています。そのため、路上での集団での飲酒はコロナのリスクを高めるという認識を持ち、是非とも自粛していただきたいと思います。
(著者:浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野 邦夫)
〔文献〕
(1)国立感染症研究所:積極的疫学調査実施要領における濃厚接触者の定義変更等に関するQ&A(2020年4月22日)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9582-2019-ncov-02-qa.html