飲食を伴うようなカラオケ店(いわゆるカラオケパブやカラオケ喫茶など)で高齢者のクラスター発生が多発しています。カラオケが高齢者の楽しみだとは理解しますが、楽しむ前に一度、考えて欲しいことがあります。
カラオケでは当然、歌うという行為がなされます。大きな声で数分間歌い続け、それを繰り返します。また。聴いている人々と一丸となって楽しむため、笑ったり、叫んだりすることでしょう。このとき、大量の飛沫が口や鼻から周囲に拡散します。更に、そこでは飲食もするので、マスクの着用が不十分になっています。最近は換気に努めている店も多いのですが、多人数が同室すると「密」は避けられません。すなわち、クラスターが発生しやすい状況が作り出されているのです。
コロナ時代の閉塞感のなか、カラオケで大声を出して、抑圧した気持ちを発散したいのは分かります。しかし、それによって感染すれば、隔離が必要となります。隔離されれば自由が奪われます。そして、歩行する機会が減り、足の筋肉も衰えることでしょう。これまで歩けた高齢者が歩けなくなることもあるのです。また、高齢者がコロナに感染すると、重症化する可能性が高くなり、死亡することもあります。実際、80歳以上の男性が感染すると5人に1人が死亡します。80歳以上の女性では10人に1人です。命懸けのカラオケということになってしまいます。今は我慢して、カラオケは止めて頂きたいと思います。
近々、高齢者から新型コロナウイルスのワクチンが接種される予定です。3~4週間空けた2回接種が必要ですが、2回目接種から14日すれば強い免疫が与えられます。少なくとも、その日まではカラオケは避けてください。もちろん、ワクチンを2回接種したからといって、カラオケ全面解禁ということではありません。歌っているときには2メートル以内に人を近付けないとか、歌い終えたらマスクを着用するとか、マイクは毎回消毒するなどの感染対策は必要です。
(著者:浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野 邦夫)