「ちょっと混雑」のイメージは、「座席は埋まっており、立ち客同士の接触はしないが、隣の客との距離が近く(50㎝くらい)、車内移動はあまりできない」という状況です。すなわち、一抹の不安を感じつつ乗車するという微妙な混雑状況です。現在、緊急事態宣言やテレワークにより満員乗車はなくなりましたが、この様な状況は通勤時に多々遭遇しています。混雑を避けたつもりでも、気が付いたらこの状況となることもあって、多くの方が気にしているのではないでしょうか。それでは、どうしたらよいのでしょうか?
まず、身体的距離(1~2m)を空けることができないことから、ユニバーサル・マスキングが必要です。すなわち、すべての人々がマスクを着用しているといった状況です。最近は、ユニバーサル・マスキングが浸透してきており、マスクの着用なしで電車やバスに乗車する人はほとんどいません。しかし、マスクと顔に大きな隙間があったり、鼻を出していたり、顎マスクであったりすることはあります。このような場合であっても、自分が適切にマスクを着用していればよいのです。すなわち、マスクと顔が密着し、マスクから鼻を出すことなく、顎にマスクを移動させないということです。
忘れてはいけないのが、吊り革や手すりなどの「手指の高頻度接触面」に触れた後の自分の手指です。そのような環境に触れたら、すかさずに、手指消毒をします。手指にウイルスが付着している可能性があるからです。これは混雑の程度に関係なく大切なことです。このような手指消毒を実行するためには、携帯用の手指消毒薬を持ち運ぶのがよいと思います。
「ちょっと混雑」であっても、空気感染やエアロゾル感染については心配する必要はありません。新型コロナウイルスは日常的には空気感染もエアロゾル感染もしないからです。そのため、電車やバスの中では空気について心配する必要はありません。
(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)