現在、お店でコロナ患者が発生したときには、事実を公表することが当たり前になっています。お店の利用者としては正直な知らせを有難いと思う反面、対処・終息後であっても、そのお店に行って大丈夫なのかと、不安に駆られることもあります。それでは、実際のところ、どうなのでしょうか?
「従業員がコロナ陽性と判明したことを公表した店」では、濃厚接触者はPCR検査が実施され、陽性であれば、隔離されます。陰性の場合には14日の外出自粛が行われます。14日というのは潜伏期間の最大日数であり、その日数を経過していれば、発症することはありません。もちろん、店のドアノブや手すりといった「手指の高頻度接触面」は消毒されていることでしょう。また、このウイルスが環境表面で感染性を保っているのはプラスティックやステンレスの表面では最大3日、ボール紙の上では最大24時間程度であることが知られています(1)。そのため、万が一、消毒の対象から漏れた環境表面にウイルスが付着していたとしても、3日が経過すれば心配する必要はありません。当然のことながら、店内の空気については全く問題ありません。新型コロナは日常的には空気感染やエアロゾル感染しないからです。
このウイルスは無症状の感染者が多いことから、公共交通機関(バスや地下鉄など)には必ずと言ってもよいほど感染者が乗車していることしょう。しかし、そのような交通機関を利用しないということは行われていません。マスクを着用し、手指消毒を行うということで乗車しています。一方、「従業員がコロナ陽性と判明したことを公表した店」は、業務を再開した時点で感染源は排除されています。このような店では、十分な感染対策が実施され、従業員や環境からの感染の可能性は皆無であることから、通常通りにマスク着用と手指消毒を実施すれば、これまで通り、お店に入ってもよいのです。
(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)
〔文献〕
(1)Doremalen NW et al:Aerosol and surface stability of HCoV-19 (SARS-CoV-2) compared to SARS-CoV-1
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.09.20033217v2.full.pdf