東北地方における新型コロナウイルス陽性者数は首都圏に比べれば少ないです。12月31日現在、東北では宮城県が一番多く2,177人、福島県は二番目で956人です。しかしながら、福島県内でも第3波における増加が止まらず、病床使用率が20%を超えたこともあり、12月14日にステージ1からステージ2に移行することとなりました。
12月以降、県内の陽性者数を押し上げているのが福島市です。前半ではスナック店で10人を超えるクラスターが発生し、マスクなしの会話やカラオケが原因と考えられました。さらに、感染伝播の範囲は1店舗だけに留まらず、近隣の飲食店、利用客が勤務する会社、そして家族へと次々に及んだと推察されます。さらに、福島市内で複数の医療関連感染が報告されました。1つの病院では患者、医療従事者を合わせて50人を超えるクラスターとなりました。この頃になると、新型コロナウイルス感染症とは異なる疾患で入院しながら、後に感染者と判明する事例が散見されるようになりました。こういった事例では、その入院患者が陽性と診断された時点で、すでに同室者や医療従事者が感染していることが多いです。医療機関で院内伝播が起こった場合、濃厚接触者となった医療従事者は自宅待機となるため、長期間にわたって病院機能が制限されることになります。
これらの結果、12月末には福島市においては10万人当たりの週別陽性者数が東京都と同等となってしまいました。県北地域の病床占有率は80%近くまで跳ね上り、陽性者を入院させるための調整には日数を要するようになりました。福島県は特措法に基づいて、福島市内の酒類を提供する飲食店に対し12月28日から1月12日まで営業時間の短縮を要請しました。
福島県立医科大学附属病院は、当初は重症者用として10床確保していましたが、状況の変化に伴い、感染症病棟の他に2つの病棟を新型コロナ用として再編成しています。当然、附属病院が持つ特定機能病院としての役割に大きなしわ寄せがきています。
(著者:公立大学法人福島県立医科大学感染制御学 教授 金光 敬二)