成人式を開催するかどうかは地域によって判断が異なっています。ある地域では感染対策に配慮しながら開催し、別の地域では中止することが予定されています。どちらが正しい判断かは現時点では明らかではありませんが、おそらく成人式の会場ではクラスターは発生しないと推測されます。それは、成人式では感染対策の実施が厳しく管理されるからです。
米国疾病管理予防センター(CDC)が、「新型コロナに感染した子どもは、どこで感染したのか?」について調査しました(1)。すると、感染したのは学校ではなく、パーティーや一緒に遊んだなどというときだったのです。これは学校で実施されている感染対策が適切であることを意味しています。
成人式ではマスクの着用を強く求められ、手指消毒を求められます。その状況は学校に似ています。そのため、成人式でのクラスターは発生しにくいと推測されるのです。問題は、成人式が終わった後です。多数の新成人が一緒に居酒屋に行って、アルコールを飲みながら大騒ぎをすれば、飛沫を大量に浴びることになり、そこはクラスターが発生しやすい環境となります。そのため、成人式を開催するならば、成人式の後の飲食は避けるように啓発しなければなりません。成人式を「クラスターが発生しないように啓発する機会」とするか、「クラスターを発生させる前段階を提供する場所」となるかは主催者の責任かもしれません。
成人式では参加者には、マスクの着用と手指消毒に加えて、大声を出すことなく、静かに厳かに出席してもらいます。そして、「若い人々が感染しても軽症ではあるが、症状が完全になくなるまで数週間を要することがある」「自分が感染すると、自宅や自分の周囲にいる高齢者や基礎疾患のある人に感染させて、重症化させる可能性がある」「マスクを着用しない状況で大声で叫ぶことはクラスターを引き起こしやすい」などの情報を提供することが大切です。
成人式を啓発の場として活用できるならば、成人式は実施すべきです。しかし、そのような啓発が困難であるならば、成人式は諦める方がよいでしょう。
(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)
〔文献〕
(1) Hobbs CV et al:Factors associated with positive SARS-CoV-2 test results in outpatient health facilities and emergency departments among children and adolescents aged <18 Years — Mississippi, September–November 2020
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/pdfs/mm6950e3-H.pdf