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2020.10.23 病原体

居酒屋の正しい新型コロナ感染対策 著者:森兼 啓太

 

新型コロナの感染経路は、主に飛沫感染です。感染している人が会話などで飛沫を発生させ、それを吸い込んだ人が感染するという経路です。吸い込まなくても、感染者が出す飛沫が周囲の環境に付着し、そこに別の人が手を触れて、その手で自分の鼻や口を触って感染する経路もないわけではありません。

新型コロナはさらに、症状が出る2日ほど前から他人を感染させる能力があるということがわかっています。感染者も、発症前は普通の社会生活を営むことでしょう。そのような人が会食の場に居たら、同じグループの人達が感染するのは仕方ないことと言えます。

しかし、感染する人はそれだけではありません。店内の他のグループに感染者がいた場合にも、他のグループの人が感染するかもしれません。その、他のグループの感染者ができるだけ遠いところにいれば、それだけ感染リスクが下がります。

典型的な居酒屋は、その意味ではコロナ感染リスクの巣窟のようなものでした。狭い空間に大勢が集まり、酔った勢いで大声をあげて会話をする環境は、活気があって楽しい場ではありますが、密集・近接・密閉の3拍子揃っており、ウィズコロナの時代には合いません。

ではどうすれば少しでも感染リスクを下げられるのでしょうか? まず、客同士の感染リスクを下げる方法として考えられる対策は以下のようなものです。

・グループ毎の席を極力離すか、間についたてなどの障壁を設ける
・窓を開けたり取り外したりして、極力換気を良くする
・入店する客の健康チェック(体温測定や症状のスクリーニングなど)
・滞在時間の短い客には割安なプランを提供するなど、客が長居しないようにする
・一組の客が退店した後の環境整備を熱心に行う

また、店員が行うべき対策として、常にマスクを着用して客から感染しないようにすると共に、自身の健康管理にも留意し、発熱などがある場合は無理に出勤しない、といったことが考えられます。

居酒屋に行くなら、これらの対策がとられた店に行きたいものです。

(著者:山形大学医学部附属病院検査部 部長・病院教授/感染制御部 部長 森兼 啓太)

著者プロフィール

森兼 啓太(もりかね けいた)

山形大学医学部附属病院検査部 部長・病院教授/感染制御部 部長

インフェクションコントロールドクター。国立感染症研究所主任研究官、米国疾病管理予防センター客員研究員などを経て現職。日本環境感染学会理事、日本外科感染症学会理事を務める。日本環境感染学会ではISO/TC304国内審議委員会委員長として手指衛生の国際標準規格の制定に向け尽力している。

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山形大学医学部附属病院検査部 部長 病院教授・感染制御部 部長 森兼 啓太
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2020年7月刊