感染対策のポータルサイト「感染対策Online」
運営会社: Van Medical
2020.05.15 病原体

矢野邦夫タイムズ WHO COVID-19 ぷちREPORT No.9 道路や歩道などへの消毒液の噴霧 著者:矢野 邦夫

 

新型コロナウイルスについての海外の報道をみていると、道路や歩道などに消毒液と思われる溶液を噴霧している画像が流れていることがあります。しかし、日本の行政がそのようなことを行っているところを見たことがありません。東京のように新型コロナウイルス感染者が多い地域でも環境への消毒液の噴霧は実施していません。どちらが正しいのでしょうか? これについて、WHOは「環境表面の洗浄と消毒」という記事を掲載しているので紹介します(1)。

確かに、新型コロナウイルスは手指の高頻度接触表面(スイッチなど)を介して伝播する可能性があります。そのため、そのような環境表面は、水と洗剤で洗浄してから、消毒液を塗布します。この時、環境表面を擦るように洗浄して、有機物を物理的に確実に除去することが大切です。消毒薬としてはアルコール液や次亜塩素酸ナトリウム溶液が用いられますが、これらの消毒薬を環境表面に曝露するために推奨される最短時間は1分間もしくはメーカーの推奨時間となります。

通りや歩道は、手指の高頻度接触表面ではないので、新型コロナウイルスの伝播経路とは見なされません。さらに、消毒薬はほこりや汚れによって不活性化されるので、そのような空間からすべての有機物を洗浄して取り除くことは不可能です。有機物が存在しなくても、病原菌を不活性化するために必要な消毒薬の接触時間の間、噴霧された消毒液がすべての表面を適切に覆うことはありません。

そのため、WHOは「新型コロナウイルスや他の病原体を除去または不活性化するために、屋外スペース(通り、歩道、市場など)に消毒液を噴霧することは推奨しない」と述べています。すなわち、日本の行政の対応が適切なのです。

〔文献〕
(1)WHO:Cleaning and disinfection of environmental surfaces.https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/situation-reports/20200514-covid-19-sitrep-115.pdf?sfvrsn=3fce8d3c_4

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。

一覧へ戻る
関連書籍・雑誌
見える!わかる!! 病原体はココにいます。

◆病院内の各区域のどこに病原体が存在しているのか?
◆気を付けるべき場所と病原体を見える化したまったく新しい書籍!

浜松医療センター 副院長 兼 感染症内科長 兼 衛生管理室長 矢野邦夫 著
2015年2月刊

手術医療の感染対策がわかる本

◆手術室や周術期だけでなく,場所・時間・期間を幅広く網羅した,手術医療の業務
 全般に対する感染対策を総合的に解説。
◆手術医療における「こんな時どうするの?」に対して,様々なガイドラインや最新の
 エビデンスより筆者が導き出した,最適・適正な感染対策の答えがこの一冊に集約!

浜松医療センター 副院長 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野邦夫 著
2018年11月刊

感染対策ICTジャーナル Vol.15 No.2 2020 特集:技術進歩とともに進化する  軟性内視鏡の感染管理

編集:東京女子医科大学医学部感染制御科 教授/同大学病院感染制御科 診療部長 満田 年宏
   山形大学医学部附属病院検査部 部長 病院教授・感染制御部 部長 森兼 啓太
   自治医科大学附属病院感染制御部長・感染症科(兼任)科長,自治医科大学感染免疫学 准教授 森澤 雄司


2020年4月刊