ノロウイルスは極めて感染力が強く、日本各地において、多数の人々が同時に感染性胃腸炎となる集団感染を引き起こしています。そのため、ノロウイルスの感染対策を徹底することが大切です。
■ノロウイルス胃腸炎
ノロウイルスはすべての年齢で急性胃腸炎を引き起こすことができます。潜伏期は12~48時間であり、急に発症します。下痢、嘔吐、吐き気、腹痛が特徴ですが、吐き気または下痢のみの人もいます。症状は厳しいけれど、元来健康な人では治療せずとも1~3日後には回復します。しかし、高齢者や長期療養施設の入所者では重症化したり、死亡することがあります。それは脱水になったり、誤嚥性肺炎を合併することがあるからです。
■ノロウイルスの感染経路
ノロウイルスは主に糞便中に排出されます。感染後4週間はウイルスが便中に検出されますが、ウイルス排出のピークは感染後2~5日です。ウイルスが嘔吐物にみられることもあるので、嘔吐者がいる部屋では嘔吐物がエアロゾル化し、ノロウイルスが空気中に浮遊することがあります。そのため、ノロウイルスの主な感染経路は「ノロウイルスに汚染した食物を食べて感染する」「ノロウイルスを含んだ嘔吐物のエアロゾルを吸い込んで感染する」「嘔吐物や糞便などで汚染した環境表面に触れた手指を介して感染する」などです。
■感染対策
適切に手洗いすることはノロウイルス感染を予防するための最も重要な方法です。石鹸と水道水による少なくとも20秒の手洗いが手指のノロウイルス汚染を減らす最も有効な方法です。ノロウイルスはアルコールに抵抗性があるので、アルコール手指消毒はノロウイルス対策としてはお勧めできません。
環境表面を消毒することも、汚染した表面からのノロウイルスの伝播を遮断するために重要です。この場合、トイレやドアノブや手すりなどを重点的に消毒します。次亜塩素酸ナトリウムは環境表面のノロウイルスを消毒するために広く推奨されており、その効果は十分に証明されています。また、エアロゾルによる感染を避けるために、嘔吐した人がいる部屋は十分に換気します。
(著者:浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野 邦夫)