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2022.11.28 病原体

オミクロン株BA.4-5対応(二価COVID-19 mRNA)ワクチンの有効性

著者:矢野 邦夫

これまでオミクロン株BA.4-5対応(二価COVID-19 mRNA)ワクチン(以下、二価ワクチン)による中和抗体価の増加についての報告はありました。実際、オミクロン BA.4/BA.5 に適合した二価ワクチンをブースター接種してから1ヵ月後の新興のオミクロン亜系統に対する中和抗体価は、一価ワクチンと比較して3.2~4.8倍増加したというデータがあります。また、オミクロン亜系統 BA.4.6、BA.2.75.2、BQ.1.1、 XBB.1に対する中和抗体価は、2価ワクチンのブースター接種後は、ブースター接種前のレベルから4.8~11.1倍増加したというデータもあります(1)。しかし、それらは抗体の産生についてのデータであり、リアルワールドでのデータではありません。

2022年11月22日、CDCが症候性新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の予防における二価ワクチンの有効性についてのデータを公開しました(2)。これは二価ワクチンのブースター接種のリアルワールドでの有効性について初めて示されたデータです。ここでは、「相対的ワクチン有効性」が二価ワクチンをブースター接種した場合(一価ワクチンを 2、3、4 回接種した後)と二価ワクチンをブースター接種しない場合 (ただし、一価ワクチン接種は2、3、4 回接種している)のオッズを比較することによって計算されました。すなわち、相対的ワクチン有効性は「二価ワクチンのブースター接種」を「一価ワクチンの2回以上の接種」と比較したものであり、直近の一価ワクチン接種から2~3ヵ月が経過した人において、18~49歳では30%、50~64歳では31%、65歳以上では28%の効果でした。直近の一価ワクチン接種から8ヵ月以上が経過した人(8ヵ月以上が経過したため、ワクチン効果がほとんど残っていない)においては18~49歳では56%、50~64歳では48%、65歳以上では43%の効果でした。この研究によって、過去に一価ワクチンを 2、3、4 回接種された人に二価ワクチンを接種すると、症候性SARS-CoV-2感染に対して追加の防御が提供されることが示されました。また、一価ワクチンの直近の接種からの時間が経過すると「相対的ワクチン有効性」が増加することが示されていますが、これは一価ワクチン接種のあとに時間の経過とともに低下した防御が二価ワクチンのブースター接種によって回復できることを示しています。

(著者:浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野邦夫)

〔文献〕
(1)Pfizer and BioNTech Report New Data on Omicron BA.4/BA.5-Adapted Bivalent Booster Demonstrating Improved Immune Response Against Emerging Omicron Sublineages. https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/pfizer-and-biontech-report-new-data-omicron-ba4ba5-adapted
(2)Link-Gelles R, et al:Effectiveness of bivalent mRNA vaccines in preventing symptomatic SARS-CoV-2 iInfection — Increasing community access to testing program, United States, September–November 2022. https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/71/wr/mm7148e1.htm

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「アフターワクチンの新型コロナ感染対策」「感染対策超入門―成功の秘訣」「がっちり万全な 新型コロナ感染対策 受験編20」「ばっちり安心な 新型コロナ感染対策 旅行編20」「うっかりやりがちな 新型コロナ感染対策の間違い15」「7日間できらりマスター 標準予防策・経路別予防策と耐性菌対策」(以上、ヴァン メディカル刊)など。