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2022.02.01 病原体

新たな変異体「ステルスオミクロン」とは―これまでのオミクロン株とはどう違うか

著者:坂口 剛正

ステルスオミクロンは、オミクロン株(Pango分類でBA.1)が少し変異した亜種のBA.2といわれるウイルス株です。BA.1が増殖しているうちにBA.2、BA.3といった亜種のウイルスができて、このうちBA.2が、デンマーク、イギリスなど40カ国で広がっています。デンマークでの新規感染者数をみると、BA.1の上昇が一旦落ち着いて横ばいになったのちに再び急上昇しており、ここでBA.2が出現したと考えられます。BA.2は感染力が強くて、京都大学西浦教授の計算では、実効再生産数(1人から何人に感染させるか)が、BA.1に比べて18%増えているとのことです。

ステルスという名前は、見えない敵が来たようで恐怖を抱かせます。実は、これはBA.2が欧州で主に使われているPCR検査で検出できないためについた名前です。PCRで検出する部位に、たまたま変異が起こったということで、特別なことが起きたわけではありません。PCR検査キットを替えれば普通に検出できます。

BA.2は、感染力が強い分、徐々にこれまでのウイルスを押しのけて、感染者の数も増えていくと考えられます。これまで日本でも、アルファ株、デルタ株、オミクロン株と感染力が強いウイルスが出現しては流行の波を作ってきました。一方で、病原性はだんだん弱くなってきました。特にオミクロン株になってからは、上気道(口や喉)の感染が主になって、下気道での肺炎などは起こりにくくなっています。致死率も、季節性インフルエンザと同等あるいは低くなっています。ステルスオミクロン株が来ても重症化しにくいと思われます。その点は安心してもらえればと思います。

新型コロナウイルス感染症は、感染症法で2類相当のままですので、感染者が増えて保健所および医療機関がパンクしつつあります。季節性インフルエンザなみの5類相当に変更すべきであると思います。(2月1日現在)

(著者:広島大学大学院医系科学研究科ウイルス学 教授 坂口剛正)

著者プロフィール

坂口 剛正(さかぐち たけまさ)

広島大学大学院医系科学研究科ウイルス学 教授

2009年より現職。日本ウイルス学会評議員、中国四国ウイルス研究会代表幹事、広島県新型コロナウイルス感染症対策専門員会議委員、広島市感染症対策協議会副委員長、AMED新興・再興感染症基盤創生事業プログラム・オフィサー。35年にわたり、主にインフルエンザウイルスなどのRNAウイルスの基礎的な研究をはじめ、消毒剤や抗ウイルス薬の応用までを研究している。現在は新型コロナウイルス研究を行っている。