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2022.01.11 病原体

急拡大するオミクロン株はどうなる? ―南アフリカ共和国の急増・急減に見る日本の今後のシナリオ

著者:渡辺 彰

日本における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第6波は、新たな変異株であるオミクロン株のこれまでとは別次元の急増により、パンデミックの様相です。最初に患者が増加した沖縄県では、医療現場の混乱も始まっています。今後どうなるのでしょうか?オミクロン株が最初に報告された南アフリカ共和国が参考になりそうです。

最初のオミクロン株は11月11日にボツワナで分離されたようだと言われていますが、ボツワナに近い南アフリカ共和国のハウテン州(州都はヨハネスブルグ)では11月14日以降、ほぼすべてのCOVID-19の例がオミクロン株の例になったとされています。その急増を受けた世界保健機関(WHO)は11月26日、オミクロン株をVOC(Variant of Concern:懸念される変異株)に指定しましたが、その前後の同国におけるCOVID-19の新規感染者数の推移を見てみましょう。

2021年11月22日の南アフリカ共和国(人口は約5,900万人)のCOVID-19の新規感染者数は488人でしたが、2日後の24日には18,586人と約40倍に急増しました(1)。ハウテン州での急増を受けて検査数を増加させたためとは思われますが、その後の増加は著しく、ピークの12月13日には37,875人となり、同国のアルファ株やベータ株、デルタ株流行の際のピークを上回りました。しかしその後、12月18日が20,713人、25日は18,847人、30日は9,020人、2022年1月3日には4357人と急増ぶりを裏返したかのように減少しています。日本も同じような動きになる可能性があります。

一方、新規死亡者数は、最大でもアルファ株からデルタ株の流行時の1/4程度であり、同国の2021年末の時点のコロナワクチン接種完了率が30%に満たないことに鑑みれば、オミクロン株の病原性はやはり低いものと言えるでしょう。しかしながら、拡大の局面で同国が経験したように、これまでにない感染者数の急増によって病床が足りなくなるだけでなく、医療従事者自身の感染や濃厚接触によって勤務からの一次的な離脱が起り得ますし、PCR検査等への需要が急速に増加しますから、入院や療養隔離などの基準の変更などを含めて早急に対応策を考えなければなりません。

(著者:東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授/公益財団法人宮城県結核予防会 理事長 渡辺 彰)

〔文献〕
(1)COVID-19 Report:南アフリカにおける新型コロナウイルス(COVID-19)感染者の推移
https://jpmarket-conditions.com/COVID-19/ja/South-Africa/

著者プロフィール

渡辺 彰(わたなべ あきら)

東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授
公益財団法人宮城県結核予防会 理事長

日本感染症学会専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会指導医。東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発寄附研究部門教授・日本感染症学会理事・日本結核病学会理事長・日本化学療法学会理事長を歴任。2013年、結核医療とインフルエンザ医療に関する貢献で第65回保健文化賞,2017年、抗インフルエンザ薬の臨床開発とインフルエンザ感染症対策の推進への貢献で日本化学療法学会の第28回志賀 潔・秦 佐八郎記念賞を受賞している。