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2021.11.29 病原体

オミクロン株 最新情報—新型コロナ新変異株 著者:矢野 邦夫

 

現在、オミクロン株の出現が世界を震撼させています。VOC(懸念される変異株;Variant of Concern)に分類される変異株が出現したのは、アルファ株(2020年9月)、ベータ株(同年5月)、ガンマ株(同年11月)、デルタ株(同年10月)であることから、実に12カ月ぶりの出現です。

2021年11月24日、南アフリカ共和国からWHOにB.1.1.529変異株が報告されました。これまで南アフリカでは3つの流行があり、最後の流行はデルタ株によるものでした。しかし、この数週間、感染が急増しており、それはB.1.1.529によるものであると考えられています。最初の症例は11月9日に採取された検体から検出されました(1)。この変異株には数多くのアミノ酸変異があり、そのいくつかは心配すべきものであるといえます。そして、他のVOCに比較して、再感染しやすいことが知られています。このようなことから、WHOは2021年11月24日にB.1.1.529をVUM(監視下の変異株;Variant Under Monitoring)に分類しましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)疫学に有害な変化を示すエビデンスに基づいて、 11月26日に「オミクロン株」と命名し、VOCに位置づけを変更しました。日本においても、11月26日に国立感染症研究所はオミクロン株をVOI(注目すべき変異株;Variant of Interest)として位置づけていましたが、11月28日、国外における情報と国内のリスク評価の更新に基づき、VOCに位置付けを変更しました(2)。

現時点では「感染力が強いか?」「重症化しやすいか?」「これまでのワクチンは有効か?」については調査中です。すでに述べたように、感染既往のある人でもオミクロン株には容易に感染するようです。また、現在使用されているPCR検査もオミクロン株を検出できます。重症患者でのコルチコステロイドやIL6リセプター阻害薬も有効と考えられています(3)。

(著者:浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野 邦夫)

〔文献〕
(1)WHO:Classification of Omicron (B.1.1.529): SARS-CoV-2 Variant of Concern
https://www.who.int/news/item/26-11-2021-classification-of-omicron-(b.1.1.529)-sars-cov-2-variant-of-concern
(2)国立感染症研究所:SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)について(第2報)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/10792-cepr-b11529-2.html
(3)WHO:Update on Omicron
https://www.who.int/news/item/28-11-2021-update-on-omicron

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「アフターワクチンの新型コロナ感染対策」「感染対策超入門―成功の秘訣」「がっちり万全な 新型コロナ感染対策 受験編20」「ばっちり安心な 新型コロナ感染対策 旅行編20」「うっかりやりがちな 新型コロナ感染対策の間違い15」「7日間できらりマスター 標準予防策・経路別予防策と耐性菌対策」(以上、ヴァン メディカル刊)など。

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