1.マイコプラズマ肺炎の現況
近年の感染対策の徹底により、日本におけるマイコプラズマ肺炎は現在、過去最低レベルの発生数である。
2.マクロライド耐性菌の現況
2011~2012年におけるマイコプラズマ肺炎大流行の際にはマクロライド系抗菌薬に対する耐性化が大きな問題となっていたが、その後耐性率は順調に低下し、現在野生における耐性率は複数の全国調査で15%を下回っている。
3.今、マイコプラズマ肺炎を診断する意義
マイコプラズマ肺炎と新型コロナウイルス肺炎は、
①鼻汁や膿性痰の少ない乾性咳嗽である。
②胸部CT画像にてスリガラス様陰影を呈する。
③血清抗体が有意な上昇を示すまでに日数を要することから、急性期診断としては抗原あるいは遺伝子検出が推奨されている。
④重症例においては血管炎あるいは血液凝固障害が重要な発症病理の一つとして指摘されている。
など類似点も多い。実際の発生数は少ないとしても、マイコプラズマ肺炎は新型コロナウイルス肺炎の鑑別疾患として重要である。
4.最新のマイコプラズマ肺炎診断法
日本マイコプラズマ学会による「肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針」1)では急性期における診断として抗原検出法および遺伝子検出法が推奨されている。その中にあってQプローブ法は、リアルタイムPCRによりマイコプラズマのリボソーム遺伝子の特定の部位を増幅し、Qプローブによりその部位における遺伝子変異の有無(=耐性か否か)まで判定することを可能にした方法である。なかんずく検体の前処理を必要とせず検出装置は小型かつ操作も簡便で誰でも行えるスマートジーンMyco((株)ミズホメディー)によるQプローブ・キット法は一般の医療機関における有用性が高い。
なおスマートジーンには「新型コロナウイルス検出試薬」も発売されており、RNAの抽出から検出までの全工程を1つのカートリッジ内で1時間程度で行えることから、Point Of Care Testとしてマイコプラズマ検出と合わせての活用も可能である。
5.現状におけるマイコプラズマ肺炎の治療
現在マクロライド耐性率は決して高くはなく、第1選択薬は従前どおりマクロライド系抗菌薬である。キノロン耐性化を防ぐためにも、マクロライド耐性率が高かった時代の惰性で漫然とキノロン系抗菌薬が投与されることは、可及的避けられるべきである。
〔文献〕
1)日本マイコプラズマ学会:肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針
http://square.umin.ac.jp/jsm/shisin.pdf