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2020.11.30 病原体

新型コロナ 第3波 福岡県の現状

著者:山口 征啓

日本は新型コロナウイルスの第3波に本格的に突入しました。北海道に始まり、大都市を中心に再び患者数が増加しています。福岡県も11月中には流行がやってくると考えていましたが、今のところ他の大都市に較べると驚くほど患者数が少ないです。

なぜ福岡県で患者が少ないのでしょうか? 一つには気温が関係しているのかもしれません。京都大学の西浦教授はコロナの流行と関連ある因子として、気温、人口密度、移動、コンプライアンスが重要な因子であるとわかってきたと述べています(1)。今回の北海道の流行を見ても、気温が低いことは不利な因子のようです。しかし大阪と較べると、11月の平均気温を見ると、大阪13.6℃、福岡13.8℃とほとんど変わりません。

福岡県の検査数が多いということが、福岡市の調査で指摘されています。たしかに福岡県では濃厚接触者であれば症状のない人にも積極的に検査を行っており、これが患者数の抑制につながっているかもしれません(2)。

もう一つ大きな要因は福岡県では流行の回数が他県より一回多かったことではないかと考えています。緊急事態宣言が解除された5月末から、北九州市を中心とした流行が発生しました。これにより福岡県は他の県より一回多い流行を経験し、特に北九州市では市内での発生率が低く抑えられています。これが県民のコンプライアンスを上げた可能性があります。

福岡県だけこのまま流行が小さくおさまれば大変嬉しいですが、このあと遅れて大きな波がやってくると考える方が現実的でしょう。この間さまざまな対策を行ってきました。受け入れベッドの拡大、クリニックでの検査体制の確立、飲食店での感染対策指導、保健所での業務の効率化、高齢者施設での感染対策ラウンドなどなどです。筆者は北九州市で高齢者施設を毎週ラウンドしていますが、この間のレベルアップにはめざましいものがあります。

具体的な感染対策としては病院や高齢者施設などハイリスクな場所での換気と、飲み会に代表されるマスクなしで話をする場所での対策をいかに行えるかが重要だと感じています。寒さが厳しくなると、窓を開けにくくなり、春や秋に較べると換気が難しくなりますが、サーキュレーターや全熱交換器などを利用して、この冬を乗り切りたいです。

(著者:健和会大手町病院感染症内科 山口 征啓)

〔文献〕
(1)「日本は緩和のスピードが早過ぎた」データ分析の専門家が考える今回の流行の理由.YAHOOニュース BuzzFeed 2020年11月26日
https://news.yahoo.co.jp/articles/90bf9df84b67496a03426cc53bacd2a5554cc09d?page=1
(2)福岡「第3波」大丈夫? 検査拡充で拡大抑制 「いつ来ても」警戒.西日本新聞 2020年11月27日
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/668001/

著者プロフィール

山口 征啓(やまぐち ゆきひろ)

健和会大手町病院感染症内科

日本感染症学会専門医・指導医、日本環境感染学会評議員、KRICT(北九州地域感染制御ティーム)理事。専門は臨床感染症、感染制御。福岡県新型コロナウイルス感染症調整本部に従事し、保健所業務の支援も行っている。新型コロナウイルス検定を作成し、のべ8万人以上が受験。