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2020.08.11 病原体

新幹線・特急列車 家族・友人乗車とコロナリスク―夏とレジャーとコロナ対策

著者:矢野 邦夫

同居家族や友人と一緒に乗車するとき、新型コロナウイルスの感染のリスクは異なります。同居家族は日常的に長時間の濃厚接触をしているので、一緒に乗車したからといって、さらに感染のリスクが上乗せされるということはありません。しかし、友人と一緒に乗車するとなると話は別です。特に、友人の家族と自分の家族が一緒に乗車するとなると、感染のリスクは高くなります。このような状況では、話が盛り上がってしまい、会話が多くなるからです。笑ったりすることによって、飛沫の産生が高まるのです。マスクを着用していれば、飛沫の飛散はある程度抑えることができますが、食事などでマスクを取り外すことがあれば、感染のリスクは高まります。子どもがいれば、マスクを取り外したり、マスクを顎に付けたりするので、マスクの効果が期待できません。そして、子どもは家族間を頻回に移動します。高齢者や基礎疾患のある人が同席していれば心配です。そのような人は感染すると重症化しやすいからです。

それでは感染対策はどうしたらよいのでしょうか?同居家族だけで、乗車するのであれば、周囲の人から社会的距離が確保されていればマスクも必要ありません。しかし、新幹線や特急列車の中なので、1~2mを確保することは困難です。そのため、マスクは着用して、手洗いをします。

友人と一緒に乗車するときは、おそらく、隣り合わせの座席に座り、顔と顔の距離も短いことでしょう。そして、話が弾んでしまえば、笑ったりして飛沫を大量に飛散させることから、マスクは是非とも着用します。ときどき、マスクを着用しているのに、話をするときには声が通りやすいように、マスクを下にずらして、鼻と口を露出して話す人がいます。そのようなことはマスクの効果が期待できません。これは是非とも避けるべきです。また、友人の家族と自分の家族という2つのグループが一緒に時間を過ごすとなると、よほどの覚悟が必要となります。静かに乗車してもらうしかないと思います。「With コロナ」の時代は楽しい時間を与えてくれないのかもしれません。

(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)

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著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「7日間できらりマスター 標準予防策・経路別予防策と耐性菌対策」,「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。