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2020.07.02 病原体

こどもの「3大夏風邪」:手足口病

著者:森岡 一朗

Withコロナで、保育園・幼稚園が再開しました。これから、夏になると増えてくる感染症があります。こどもの三大夏風邪とも言われる「プール熱」、「手足口病」、「ヘルパンギーナ」です。 今回は、その中の「手足口病」の素朴な疑問に答えます。

■Q.手足口病ってなに?

手足口病は、口の中や手足などに水疱性の発疹が出るウイルスの感染によって起こります。主に夏に流行し、患者の約90%程度を5歳以下の子どもが占めています。

■Q.病原ウイルスはなんでしょう? 感染経路は?

原因となるウイルスは、主にコクサッキーウイルス、エンテロウイルスです。感染経路は、飛沫・接触感染、糞口感染(便の中に排泄されたウイルスが口に入って感染すること)です。特に、乳幼児では原因となるウイルスに今まで感染した経験のない児の割合が高く、保育園や幼稚園で初めて、かつ濃厚に接触する機会が多いため発症しやすいです。

■Q.どんな症状が出るの?

感染してから3~5日後に、口の中、手のひら、足底や足背などに2~3mmの水疱性の発疹が出ます。時には肘・膝・お尻まで広がることがあります。口の中に口内炎がたくさんできると痛みが強くなり、食事ができなくなります。発熱は、約3分の1程度の患児にみられますが、あまり高くならないことが多いです。一般に高熱が続くことはありません。

■Q.治療はどうするの?

抗菌薬は効かないウイルス感染症のため、対症療法のみです。解熱薬の投与を行う場合があります。まれに髄膜炎や脳炎などの重い合併症が起こる場合があるため、高熱が続く、嘔吐する、頭を痛がる、視線が合わない、呼びかけに答えない、呼吸が速くて息苦しそう、水分が取れずにおしっこが出ない、ぐったりとしているなどの症状がみられた場合は、すぐに医療機関を受診してください。

■Q.予防はどうするの?

日頃の手指の消毒はもちろん、流水と石けんで手洗いを十分に行うことも必要です。特におむつを交換する際には、排泄物を適切に処理し、しっかりと手洗いをして下さい。また、タオルの共用は避けるようにしましょう。

(著者:日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授 森岡 一朗)

著者プロフィール

森岡 一朗(もりおか いちろう)

日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授

日本小児科学会小児科専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医・指導医。日本小児科学会の理事、日本新生児成育医学会の理事・予防接種感染対策委員長を務める。専門は、新生児・小児感染症、新生児医学、小児の成長・発達。これらに関する英文学術論文を多く発表している。主な著書に、日常診療と看護ケアのためのNICU感染対策(ヴァンメディカル刊)、新生児学テキスト(メディカ出版刊)がある。