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2020.06.19 病原体

COVID-19の重症患者とデキサメタゾン〔矢野邦夫タイムズ WHO COVID-19 ぷちREPORT No.14〕

著者:矢野 邦夫

WHOは副腎皮質ステロイドであるデキサメタゾンがCOVID-19の重症患者の生命を救うことができることを示す英国の最初の臨床試験結果を歓迎しています(1)。WHOとの予備調査結果によると、人工呼吸器を装着した患者の治療では死亡率が約3分の1に減少し、酸素のみを必要とする患者の死亡率は約5分の1に削減されました。

この利点は、COVID-19の重症患者のみに見られ、軽症患者には見られませんでした。WHO局長のTedros Adhanom Ghebreyesus博士は「これは、酸素または人工呼吸器のサポートを必要とするCOVID-19患者の死亡率を低下させることが示されている最初の治療法です」「これは素晴らしいニュースであり、私は英国政府、オックスフォード大学、そしてこの生命を救う科学の進歩に貢献した英国の多くの病院と患者を祝福します」と述べています。

デキサメタゾンは、1960年代以来、炎症性疾患や特定の癌を含む様々な状態の炎症を軽減するために使用されているステロイドです。現在、特許が外れており、ほとんどの国で手頃な価格で入手できます。

(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)

〔文献〕
(1)WHO:WHO welcomes preliminary results about dexamethasone use in treating critically ill COVID-19 patients.
https://www.who.int/news-room/detail/16-06-2020-who-welcomes-preliminary-results-about-dexamethasone-use-in-treating-critically-ill-covid-19-patients

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。