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2020.06.02 病原体

矢野邦夫タイムズ WHO COVID-19 ぷちREPORT No.13 WHO臨床管理ガイダンス改訂版

著者:矢野 邦夫

2020 年5月27日、WHOがCOVID-19 の臨床管理ガイダンスの改訂版を公開しました(1)。興味深いポイントのみを紹介します。

● 症状のある患者の隔離予防策を終了し、退院させるための条件は「発症から10日後」かつ「症状(発熱や呼吸器症状など)の消失から3 日後」です。

● PCR陽性が何週間も続いたり、一度陰性となっても、何日も何週間もPCRが陽性となる患者がいますが、感染性ウイルスはありません。

● 軽症のCOVID-19の確定例もしくは疑い例には抗菌薬療法や予防投与はすべきではありません。

● 中等症のCOVID-19の確定例もしくは疑い例には細菌感染症が臨床的に疑われない限り、抗菌薬を投与すべきではありません。

● COVID-19で入院した患者(成人および青年)では、静脈血栓塞栓症を予防するために、禁忌でなければ、低分子ヘパリン(エノキサパリンなど)のような薬理学的予防を実施すべきです。禁忌のある患者では機械的予防(間欠的空気圧迫装置)を実施します。

● COVID-19の治療や予防として、抗ウイルス薬、免疫調節薬、そのほかの補助治療薬などの薬剤を投与すべきではありません(臨床研究を除く)。

● ウイルス肺炎の治療にコルチコステロイドの全身投与を日常的に実施してはいけません。

(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)

〔文献〕
(1)WHO:Subject in Focus: Clinical case management.
https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/situation-reports/20200528-covid-19-sitrep-129.pdf?sfvrsn=5b154880_2

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。