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2021.10.27 病原体

ワクチン後の旅行はコロナ前と同じに行ける?―アフターワクチンの新型コロナ感染対策

著者:矢野 邦夫

ワクチン後の旅行については、同居家族で行くのか、友人と一緒に出かけるのかで異なります。同居家族で旅行する場合、ホテルや旅館で同室しても、マスクの着用は必要ないと思います。室内で、アルコールを飲みながら談笑しても構いません。日常的にお互いに濃厚接触していることから、旅行先のホテルで同室したからといって、接触度がさらに増大することはないからです。ただし、観光バスや電車に乗っているときには、マスクの着用は必要でしょう。周囲の乗客とのウイルスのやり取りを防ぐためです。

一方、友人と旅行するとなると話は大きく異なります。日常的に同居していないことから、友人が無症状感染者であった場合、自分に感染してしまいます。その逆もあるかもしれません。感染すれば、各々の家庭内にコロナを持ち込むことになり、家庭内感染を引き起こす感染源になります。そのため、ホテルでは別室での滞在が必要です。そして、会話ではマスクの着用が必要です。どのような親しい友人であっても、同居していなければ、感染対策上は「赤の他人」です。感染対策はきっちりとお願いしたいと思います。

それでは、友人とマスクなしで、同室で旅行できるのはいつになるのでしょうか? それは、「接種希望の人々が三回目を接種して、二週間以上が経過したとき」です。この時期であれば、友人も自分もワクチンを三回接種していることから抗体価がかなり増加しており、ブレイクスルー感染することはほとんどないことでしょう。万が一、ブレイクスルー感染したとしても、ウイルスを周囲に放出しないであろうと予測されます。また、この時期であれば、観光バスや電車で同乗している人々も、三回目を接種して、二週間以上が経過していることから、マスクの着用は必要なく、駅弁などを楽しむことができるようになると思います。

友人もしくは自分がワクチン未接種の場合には、どうしたらよいのでしょうか? その場合には、一方(周囲)がワクチン接種済でも未接種者では感染するリスクがあります。そして、ワクチンの感染予防・発症予防・重症化予防のいずれも期待できません。また、感染した場合には大量のウイルスを周囲に撒き散らす可能性があるので、常にマスクを着用して、旅行先では個室で滞在するようにしましょう。

(著者:浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野 邦夫)

【掲載】
2021年11月刊行新刊書籍「アフターワクチンの新型コロナ感染対策―ワクチン接種後のモヤっとを解決!」(矢野邦夫 著,ヴァンメディカル刊)より

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「感染対策超入門―成功の秘訣」「がっちり万全な 新型コロナ感染対策 受験編20」「ばっちり安心な 新型コロナ感染対策 旅行編20」「うっかりやりがちな 新型コロナ感染対策の間違い15」「7日間できらりマスター 標準予防策・経路別予防策と耐性菌対策」(以上、ヴァン メディカル刊)など。