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2021.06.30 病原体

2021年夏 こどもの「3大夏風邪」:プール熱

著者:森岡 一朗

2020年は新型コロナウイルスの流行による国民の衛生管理に関する意識の高まりや緊迫感などにより、こどもの3大夏風邪である「プール熱」、「手足口病」、「ヘルパンギーナ」の流行がほぼありませんでした。その結果、2020年に感染せずに免疫を獲得しなかったこどもも多く、2021年はこどもの3大夏風邪が保育園・幼稚園で大きな流行を起こす可能性があります。今回は、その1つの「プール熱」について述べます。

プール熱の正式名称は「咽頭結膜熱」です。高熱、扁桃腺炎、結膜炎がみられます。発熱は持続日数が長くなりがちで(3~5日)、喉も痛くなるため、水分や食事を摂りにくくなってしまうことがあります。病原体は、アデノウイルスです。飛沫感染や接触感染によって感染が拡大します。プール熱という呼称で慣れ親しまれているため、プールで感染すると思われがちですが、プール水での感染はまれで、むしろ接触感染が多いです。

抗菌薬が効かないウイルス感染症のため、発症したら対症療法を行います。つまり、発熱や咽頭痛に対して解熱薬の投与を行ったり、結膜炎に対して点眼薬の投与が行われます。喉が痛く水分が摂れず、脱水の徴候が認められる場合は、点滴を行うこともあります。

予防のためのワクチンはありませんので、保育園・幼稚園での感染拡大防止策は、飛沫感染対策、接触感染対策としての手洗いを励行します。タオルなどの共有は厳禁です。ドアノブやスイッチなど、複数の人が触れる場所の消毒を励行するのが良いでしょう。プールでは塩素消毒を徹底することが重要です。咽頭結膜熱では、発熱、咽頭炎、結膜炎などの主要症状が消失した後2日を経過するまで登園停止となります。ただし、アデノウイルスは便中に数か月間程度排泄されますので、排便後やおむつ交換後は手洗いを徹底するのが重要です。

(著者:日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授 森岡 一朗)

著者プロフィール

森岡 一朗(もりおか いちろう)

日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授

日本小児科学会小児科専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医・指導医。日本小児科学会の理事、日本新生児成育医学会の理事・予防接種感染対策委員長を務める。専門は、新生児・小児感染症、新生児医学、小児の成長・発達。これらに関する英文学術論文を多く発表している。主な著書に、日常診療と看護ケアのためのNICU感染対策(ヴァンメディカル刊)、新生児学テキスト(メディカ出版刊)がある。