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2021.05.24 病原体

思わずツッコミたい新型コロナ対策 未だにビニールカーテン

著者:矢野 邦夫

最近は飛沫の拡散を防ぐためにアクリル板が広く使用されています。しかし、ビニールカーテンでの飛沫対策も、未だかなり見受けられます。新型コロナウイルスの主な感染経路は飛沫であることから、飛沫を遮断する感染対策としてはどちらも有用と思います。しかし、定期的に適切な洗浄が実施されなければ、アクリル板やビニールカーテンにウイルスが付着したままとなり、感染源となり得ます。特に、コンビニのように不特定多数の人々が頻繁に訪れている状況では、感染者も来店していることでしょう。そして、アクリル板やビニールカーテンには彼らの飛沫が付着していたり、手指が触れている可能性があります。

ウイルスが環境表面で感染性をすぐに失うならば問題ありません。しかし、感染性を長期間保つことができるならば問題となります。そのため、環境表面にどの程度の期間、新型コロナウイルスが感染性を保っているのかが気になるところです。それに関する研究によると、プラスティックの表面では3日間も感染性を保っていました(1)。アクリル板やビニールカーテンの表面でウイルスが感染性を保っている期間は明確ではないのですが、短時間ではないことは明らかです。そのため、定期的に洗浄剤で表面を拭き取る必要があります。

このとき、アクリル板であれば容易に拭き取ることができます。しかし、ビニールカーテンの拭き取りは不十分になってしまいます。表面の異物を除去するためには、ある程度の物理的な力が必要です。アクリル板では洗浄剤を含んだ紙タオルなどで強く表面を擦りながら拭き取れます。しかし、ビニールカーテンでは強く擦ることができず、汚れの除去が不十分になってしまいます。そのため、ビニールカーテンからアクリル板への移行が望まれます。そして、定期的な洗浄を実施します。

(著者:浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野 邦夫)

〔文献〕
(1)Doremalen NW et al:Aerosol and surface stability of SARS-CoV-2 compared with SARS-CoV-1. N Engl J Med 382:1564-1567, 2020

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「がっちり万全な 新型コロナ感染対策 受験編20」「ばっちり安心な 新型コロナ感染対策 旅行編20」「うっかりやりがちな 新型コロナ感染対策の間違い15」「7日間できらりマスター 標準予防策・経路別予防策と耐性菌対策」「救急医療の感染対策がわかる本」「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(以上、ヴァン メディカル刊)など。