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2021.05.06 病原体

新型コロナ 第4波 大阪府の現状―第4波の真っ只中、大阪は・・・

著者:掛屋 弘

大阪は第4波の真っ只中で、2021年4月末より連日1, 000人を超える新型コロナウイルス感染症の新規患者数を記録し続けています。まん延防止等重点措置法の要請に引き続き、3度目の緊急事態宣言が発出されて約1週間経ちますが、未だその効果は見えてきません。連休中ですが昨日(5月1日)も大阪府の最高記録を塗り替えました。第4波では重症化のスピードが早く、第3波までには経験しなかった20歳代、30歳代の若年層にも重症化が見られます。N501Y変異株の影響は明らかで、今後全国への拡大に伴う変異株の影響が危惧されます。

報道には繰り返し「医療逼迫」という言葉が流れています。「逼迫」とは、「 行き詰まって余裕のなくなること。事態が差し迫ること。」を意味しますが、大阪の医療情勢は既に逼迫状態を超えています。重症患者は準備された病床数の100%を遥かに超え、軽症・中等症病床も余裕はありません。一部の軽症・中等症専用病院では重症化した患者の人工呼吸器管理が行われています。また、救急搬送が可能な病院を探すのに長時間を要するため、「入院患者待機ステーション」が開設されました。それでも、中には搬送先が決まるまでに36時間以上待機した患者もいたといいます。患者に寄り添い現場で従事するすべてのスタッフに敬意を表したいと思います。

新規患者の中心は20〜50歳代です。自粛慣れなのか、行政からの「不要不急の外出自粛」、「医療逼迫」等のメッセージは人々の心を捉えていないようです。一方、院内感染や施設内感染では高齢者が犠牲となっています。私が訪問したクラスター発生の老健施設では、病院の受け入れができないため、自室で酸素投与が行われていました。自室で酸素投与下にご逝去された方は一人ではありません。その現実はどのような言葉であれば、人々に伝わるでしょうか。人々の行動変容を促す具体的な言葉とメッセージの発信方法を工夫する必要があります。

現在、大阪府下では約14,000人の自宅待機者やホテル待機者が医療の提供を求めていますが、外来で治療できる抗ウイルス薬がないことが残念です。臨床試験には時間が必要であることは理解できますが、新型コロナが興って1年以上も経過するのに、新規の治療薬が開発できないことにジレンマを感じています。一方、人類はワクチンに到達しました。世界に先駆けてワクチンが普及している国々では患者数の減少が報告されています。我が国でも、ワクチン接種のスピード化が求められます。

(著者:大阪市立大学大学院医学研究科臨床感染制御学・感染症内科 教授 掛屋 弘)

著者プロフィール

掛屋 弘(かけや ひろし)

大阪市立大学大学院医学研究科臨床感染制御学・感染症内科 教授

1992年(平成4年)長崎大学医学部卒業、第2内科に入局。河野 茂先生(現、長崎大学学長)のご指導の元、呼吸器感染症、特に真菌の研究に従事。大学院卒業後、米国国立衛生研究所(NIH)に留学。帰国後は、関連病院で呼吸器内科医として臨床経験を重ね、2007年6月より長崎大学病院・助教、その後、講師、准教授を経て、2013年4月より大阪市立大学大学院 臨床感染制御学講座 准教授として赴任。2014年10月より教授に就任し、現在に至る。