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2021.04.14 病原体

接種間隔を開けるとワクチン効果が高くなるアストラゼネカ社のコロナワクチン 著者:渡辺 彰

 

我が国では現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンは1種類の接種が既に始まり、2種類が承認審査中である。後者の一つ、アストラゼネカ社のワクチンAZD1222は現在、血栓症の併発に関連する可能性が欧米で指摘されている。後述する4つの臨床試験における血栓症の併発頻度は対照群と有意差がなく、実臨床でも100万人当たり4名程度の発生と頻度は低いものの、60歳以下の女性に多い。その機序の解明について筆者は、欧米での服用が多くて血栓症の併発が報告されている排卵抑制目的のピル(成分はエストロゲンとプロゲステノーゲン)あるいは女性ホルモンとの関連なども視野に入れた検討が必要と考えている。そうした中、1回目と2回目の接種間隔をどうするか? について興味ある成績が報告された。

Voyseyらは、2020年4月23日~12月6日に英国・ブラジル・南アフリカで実施された計4つの臨床試験の18歳以上の参加者の内、2回目を種々の間隔で接種した17,178名(AZD1222接種が8,597名、対照接種が8,581名)について、2回目接種から14日以降にCOVID-19を発症した例数を接種間隔別に比較している1)。なお、この解析には2回とも標準量を接種した例と、初回に半量を接種した例とが含まれている。2回とも標準量を接種した例では、6週間以内に2回目を接種した群のワクチン効果が55.1%(発症が35/3,890対76/3,856、前者がAZD1222接種、後者が対照接種、以下同)であり、以下、6~8週間後の接種群では59.9%(20/1,112対44/1,009)、9~11週間後の接種群では63.7%(11/906対32/958)、12週以降の接種群では81.3%(8/1,293対45/1,356)のワクチン効果であった。

初回に半量を接種した2,798例(全例が英国の例)を加えた解析でもこの傾向は同じであるが、注目すべきは初回半量を接種した群のほとんど(2,742例)が9週以降に2回目を接種している点である。彼らの前報2)では、今回の報告から南アフリカの例を除く2020年11月4日までの11,636名におけるワクチン効果を解析して、全体では70.4%のワクチン効果であるのに対し、初回半量接種群におけるワクチン効果は90.0%で有意差がある(P=0.010)としていたが、この差は接種間隔を開ける方がワクチン効果は高くなるという、今回確認された特性によるものだったと言える。

接種間隔の差異によって異なるワクチン効果の原因解明が今後期待されるが、こうした成績を背景に、英国では2回目の接種を11~12週後と推奨した。なお、1回接種のみの例の22日目~90日目の間のワクチン効果は全体で76.0%(発症が17/9,257対71/9,237)であり、2回目の接種までの間にも十分なワクチン効果を示すと思われるが、この評価は変異株がまだ少なかった時期のものと考えられる点は考慮すべきであろう。

〔文献〕
1)Voysey M et al:Single-dose administration and the influence of the timing of the booster dose on immunogenicity and efficacy of ChAdOx1 nCoV-19 (AZD1222) vaccine : a pooled analysis of four randomised trials. Lancet 397:881-891, 2021. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)00432-3.

2)Voysey M et al:Safety and efficacy of the ChAdOx1 nCoV-19 vaccine (AZD1222) against SARS-CoV-2: an interim analysis of four randomised controlled trials in Brazil, South Africa, and the UK. Lancet 1-13, Dec.8 2020. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)32661-1.

著者プロフィール

渡辺 彰(わたなべ あきら)

東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授/公益財団法人宮城県結核予防会 理事長

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