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2021.04.13 病原体

変異株の急拡大 従来型と何が違う?<新型コロナ>

著者:矢野 邦夫

新しい変異株が次々と誕生しています。そして、これらがどのような性格を持っているのかを理解することが大切です。現在、問題となっているのが、「英国型」「南アフリカ型」「ブラジル型」です。「英国型」は従来型と比較して、感染力が約50%増加し、重症度が増加している可能性があります。しかし、ワクチンの効果の減弱はありません。「南アフリカ型」は感染力が約50%増加しており、ワクチンの効果が減弱する可能性があります。「ブラジル型」もワクチンの効果が減弱しています。どうして、感染力が強くなったり、ワクチンの効果が減弱するような変異株が出現するのでしょうか?

新型コロナウイルスが人間の細胞に感染するためには、まず、ウイルス自体が細胞に結合しなくてはなりません。そのときのメカニズムとしては、ウイルスの表面にあるスパイク蛋白質という突起物で人間の細胞に結合することになります。変異とは、スパイク蛋白質のアミノ酸の一部が他のアミノ酸に入れ替わってしまった状況です。これによって、スパイクの性質が変わるのです。「N501Y」変異がある場合、スパイク蛋白質の三次元構造が変化し、従来型のスパイク蛋白質よりも、効率よく結合できるようになりました。従来型より細胞に結合しやすいので、この変異を持った変異ウイルスは感染力が強いということになります。一方、「E484K」変異があると、ワクチンの効果を減弱させる可能性が指摘されています。ただ、完全に効果がなくなるわけではありません。「英国型」「南アフリカ型」「ブラジル型」は「N501Y」変異を持っています。そして、「南アフリカ型」「ブラジル型」は「E484K」変異を持っているのです。

新型コロナウイルスは1ヶ月に2箇所程度、変異が起きるといわれ、これまでに数万もの変異ウイルスが表れています。変異しても、ウイルスの性質に影響を与えない場合もあり、すべての変異株が脅威となることはありません。

(著者:浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野 邦夫)

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「がっちり万全な 新型コロナ感染対策 受験編20」「ばっちり安心な 新型コロナ感染対策 旅行編20」「うっかりやりがちな 新型コロナ感染対策の間違い15」「7日間できらりマスター 標準予防策・経路別予防策と耐性菌対策」「救急医療の感染対策がわかる本」「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(以上、ヴァン メディカル刊)など。