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2021.02.01 領域・分野別

コロナうつに陥らないために

著者:村上 正人

COVID-19感染拡大の影響によるメンタルヘルス・パンデミックが話題になるようになりました。

2020年の全国の自殺者の速報値では前年比3.7%増の20,915人、リーマンショック後の2009年以来11年ぶりに増加に転じたと報じられました。特に小中高生の自殺が過去最多、女性では前年比80%の増加で、COVID-19そのものよりはるかに多くの日本人が自殺で命を奪われています。その背景には生活や教育環境の変化による生活リズムの乱れ、家族や友人との人間関係の悪化、経済的苦境から生じる生活基盤の破たんなど、先行きの見えない果てしない闘いの中で心身共に疲弊しうつ病を発症させているものと考えられます。

注目すべきはCOVID-19感染が報じられ始めた2月から1回目の緊急事態宣言の4月、5月を経て7月までの半年の自殺者はむしろ前年より減少しており、Go To キャンペーンなど経済活動や通常の生活が戻り始めた8月以降からに急速に増加したという点です。

自分ではコントロールできない心身のストレスが重なると多くの人が不安、悲嘆、絶望、諦めに陥るものです。このような非常事態の中でうつ病に陥らないためには以下のような注意が必要です。

1.もともと不安症やうつ病などの精神疾患を持っている人はさらに悪化するリスクを抱えています。服薬を遵守し不調時には担当医の診察を受けましょう。
2.デマやフェイクニュース、感染者や家族への差別など無秩序な情報パンデミックに煽られ生活が揺さぶられないように注意しましょう。
3.もともと健康に自信があった人でも頑固な睡眠障害、食欲不振(または過食)、強度の疲労倦怠感、無気力感、気分の落ち込み、生きる意欲の喪失などが生じているときは早めに心の専門家を受診するなど対応が必要です。
4.高齢者や一人暮らしの人などは孤立無援に陥りがちです。身内や友人とコミュニケーションをとるようにし、困窮時には公的支援や生活保護の申請など社会のセーフティネットを活用するよう福祉担当者に相談します。
5.接触確認アプリCOCOAを使用している人の方がコロナ禍での心理的ストレスが少なく活動的だとの報告があります。根拠のある対策を講じてリスク回避をしながら仕事、運動に励むのもいいのでしょう。

1日も早いCOVID-19の終息を願うばかりです。

(著者:国際医療福祉大学心理学科 教授/山王病院心療内科 部長 村上 正人)

著者プロフィール

村上 正人(むらかみ まさと)

国際医療福祉大学心理学科 教授/山王病院心療内科 部長

日本大学医学部卒業、医学博士。日本大学医学部第一内科、米国クリーブランドクリニック・リサーチフェロー、国立高田病院内科医長、日本大学医学部呼吸器内科診療教授、日本大学医学部附属病院心療内科部長などを経て現職。学会活動として日本心療内科学会専門医、日本内科学会認定医、日本人間ドック学会認定医、日本心療内科学会理事、日本ストレス学会副理事長、日本うつ病学会評議員など。