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2020.12.08 病原体

新型コロナ 第3波 大阪府の現状―大阪府は「赤信号」、求められるのは「人」

著者:掛屋 弘

2020年12月、我が国は新型コロナウイルス感染症の第3波の真っ只中です。第1波、第2波より大きな波がやってきました。寒さが関連しているのか? 経済とコロナ対策との両立を目指した結果であるのか? 様々な要因解析が行われていますが、感染拡大防止と経済活動のどちらを重視すべきかは、難しい問題です。

大阪府下の重症病床の使用率は11月末から急増し、確保されている病床数の80%を超え、このままで行けば12月中旬にも不足となる可能性があり、行政は追加の重症病床を準備するよう基幹病院に対して働きかけています。今後の医療崩壊も危惧され、2020年12月4日、大阪府は独自の基準(大阪モデル)で非常事態を示す「赤信号」を全国に先駆けて点灯させました。私の教室の窓越しに見える大阪のシンボル通天閣は、とうとう赤色に変わりました。「赤」は何とも胸騒ぎをさせる色です。

中等症患者を担当するコロナ専門病院では、一部のスタッフの離職もあり、人手不足の常態化に加え、入院患者の高齢化が際立ちます。当院(大阪市立大学医学部附属病院)や大阪市立総合医療センターからの応援スタッフの派遣が決定されました。また、大阪コロナ重症センターが完成し、12月中旬に運用開始が予定されていましたが、看護師の確保が課題で、予定通りの運用ができるか不安要素を残しています。箱物は資材とお金があればできます。しかし、それをマネジメントするのは人です。

日本感染症学会の認定感染症専門医は1,554名(2020年10月のデータ)ですが、全国に3,000~4,000名が必要とされています。都道府県別のデータでは大阪府の感染症専門医は人口10万対1.0以下で、都道府県の中でも下位に甘んじています。ちなみに、私の出身の長崎県は人口10万対5.0を超え全国トップであることから、大阪に感染症専門医が足りないことは明らかです。教育の現場にいる者として、今後の感染症専門医の育成に注力すべきであると課題を感じていますが、プロフェッショナルを育てるのには時間がかかります。まずは、救命と感染拡大防止のために、行政・医療現場・市民が現在やれるベストを尽くすことが期待されます。

府知事はできる限りの不要不急の外出を控えるように府民に呼びかけ、先週末には外出する人がわずかに減ったようですが、正念場の師走であることには間違いありません。

(著者:大阪市立大学大学院医学研究科臨床感染制御学・感染症内科 教授 掛屋 弘)

著者プロフィール

掛屋 弘(かけや ひろし)

大阪市立大学大学院医学研究科臨床感染制御学・感染症内科 教授

1992年(平成4年)長崎大学医学部卒業、第2内科に入局。河野 茂先生(現、長崎大学学長)のご指導の元、呼吸器感染症、特に真菌の研究に従事。大学院卒業後、米国国立衛生研究所(NIH)に留学。帰国後は、関連病院で呼吸器内科医として臨床経験を重ね、2007年6月より長崎大学病院・助教、その後、講師、准教授を経て、2013年4月より大阪市立大学大学院 臨床感染制御学講座 准教授として赴任。2014年10月より教授に就任し、現在に至る。