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2020.12.02 病原体

新型コロナ 第3波 兵庫県の現状―直近の新型コロナ患者の増加傾向を踏まえ

著者:中嶋 一彦

兵庫県は生活圏が大阪、神戸と一体である人口密集地と比較的人口集中が少ない地域では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行の様相に違いがあり、人口密集地での流行が目立ちます。第2波と比べると高年齢の患者がやや多く、高齢者施設や家族内での感染が比較的多く、医療機関や高齢者施設などでのクラスターが頻発しています。高齢者が多く重症化するケースがあとを絶ちません。我々の地区では患者受け入れ医療機関で連携を組み、重症度に合わせた医療機関の受け入れ対象と入院患者数の情報共有を行い、地域の医療崩壊をきたさないよう連携を図っていますが、限界に近づきつつあります。自治体や保健所なども懸命に対策をしていますが、搬送入院も近隣ではおさまらず、広域に及ぶようになってきました。また、感染経路が不明な例も多くみられるようになり、市中での感染増加は医療従事者の感染のほか、その家族の感染をもたらします。この結果、医療従事者も家族内での濃厚接触者となり、医療環境のマンパワーに影響が出ています。

街中をみると、繁華街ではマスクの装着は97%ぐらいでここ数ヵ月変わりはありません(ただし、私の通勤途中のカウントで、地域や対象のバイアスはありますが)。しかし、明らかに感染者は増えており、会食や手指衛生の実施状況の影響も考慮されるところです。そしてGo To キャンペーンもあるのでしょうが、街中には人に溢れています。純粋にCOVID-19阻止の面からは外出や人との接触を完全に無くしたいところですが、経済活動も必要です。歴史的にみても17~18世紀のペスト、コレラの流行を見ても、外来船舶に観察期間を設けてからの上陸や荷揚げ許可、すなわち検疫を経験的に行っていましたが、金銭によるルール破りや経済的なダメージを懸念した緩和圧力の結果、感染が一気に上陸、拡大した事例がいくつも残されています。どの時代でも人の行き来や経済活動が盛んな地域での流行阻止の困難さがあり、制圧には社会的に非常な痛みを伴うものであるといえます。

(著者:兵庫医科大学感染制御部 講師/副部長 中嶋 一彦)

著者プロフィール

中嶋 一彦(なかじま かずひこ)

兵庫医科大学感染制御部 講師/副部長

平成7年 兵庫医科大学卒。兵庫医科大学消化器内科入局。兵庫医科大学細菌学講座、同上部消化管科を経て、2006年より兵庫医科大学感染制御部に勤務し2010年より現職。