感染対策のポータルサイト「感染対策Online」
感染対策Online
2020.10.22 病原体

手の清潔を保つための手荒れケア―新型コロナにかからないために

著者:森兼 啓太

新型コロナの流行は、先が見えない状況になっています。1日に感染する人の数は、日本では数百人程度にとどまっていますが、インドやアメリカなどでは数万人と桁違いです。人口の差を考えても何故このような差が生まれるのかについては諸説ありますが、特にアメリカの様子を見ていると人々がマスク着用を徹底していないのが大きく影響していると考えます。

新型コロナの感染経路は、主に飛沫感染です。感染している人が会話などで飛沫を発生させ、それを吸い込んだ人が感染するという経路です。似たような経路で感染するのがインフルエンザです。

インフルエンザは毎年冬に流行しますが、その感染対策は、流行シーズン前のワクチン接種と感染者が家に留まり外出の際はマスクを着用するといったものです。新型コロナは、ワクチンがまだできていませんが、症状が出る2日前から他人を感染させる能力があるということがわかっています。全員がマスクを着用することの効果は計り知れません。

では、その他の対策はどうでしょうか? インフルエンザにしても新型コロナにしても、感染者が咳やクシャミをしてまき散らす飛沫は、周囲の環境に付着します。そこに別の人が手を触れ、その手で自分の鼻や口を触ったらどうでしょうか? 専門家の間では、こういった「接触感染的な感染経路」も、少なくともインフルエンザに関しては存在すると考えています。

香港の約300家庭で、冬の間手指衛生を熱心に実施した群では、そうでない群に比べて家庭内のインフルエンザの伝播を大幅に抑制したという研究結果があります(1)。このことから考えて、新型コロナも手指衛生が感染防止に役立つと考えるのが賢明です。

手指衛生の妨げとなるもののひとつに、手荒れがあります。手が荒れてしまいますと、手指衛生に最も効果的で便利であるアルコール性手指消毒薬がしみて使えなくなってしまいます。そこで、肌が乾燥する冬に入る前に、手荒れクリームの塗布やマッサージといった「ハンドケア」により、手荒れを守ることが大切です。

(著者:山形大学医学部附属病院検査部 部長・病院教授/感染制御部 部長 森兼 啓太)

〔文献〕
(1)Cowling BJ et al:Facemasks and hand hygiene to prevent influenza transmission in households: a cluster randomized trial. Ann Intern Med 151:437-446, 2009

著者プロフィール

森兼 啓太(もりかね けいた)

山形大学医学部附属病院検査部 部長・病院教授/感染制御部 部長

インフェクションコントロールドクター。国立感染症研究所主任研究官、米国疾病管理予防センター客員研究員などを経て現職。日本環境感染学会理事、日本外科感染症学会理事を務める。日本環境感染学会ではISO/TC304国内審議委員会委員長として手指衛生の国際標準規格の制定に向け尽力している。