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2020.10.06 病原体

合格祈願!受験生の親のコロナ対策―子どもの将来のためのマナー

著者:矢野 邦夫

受験生を持つ家庭は受験日が近付くに従って、心配事が増えてきます。もちろん、受験生は合格のために、一生懸命に勉強し、健康管理し、受験当日に最高の実力が出せるように努力しますが、受験生の親も子どものために、できる限りのことをしたいと思っていることでしょう。受験生が新型コロナに感染すれば、受験日直前や受験日当日であっても、隔離されることになります。そして、子どもの健康状態が心配となり、受験どころではなくなるからです。ここでは、受験生の親がすべき、新型コロナ対策をについて解説します。

子どもは学校や塾などでは、マスクを着用し、手洗いをしています。それを徹底すれば新型コロナといえども、なかなか感染しません。しかし、家庭内では家族と24時間の濃厚接触をするので感染の機会は増えます。家族の誰かが感染した場合に同居家族が感染する確率は10~40%と言われています(1)。そのため、受験生を新型コロナから守るためには、家庭での感染対策の徹底が大切です

まず、ウイルスを家庭に持ち込まないようにします。そのためには、家族は仕事や買い物などで出かけた場合、マスクを着用し、アルコール手指消毒をします。アルコール手指消毒は外出時には20分毎にするとよいでしょう。無意識のうちに、手すりなどに触れたときにウイルスが手指に付着し、そのまま眼や鼻の粘膜に触れることによって感染することを避けるためです。

帰宅したときには、玄関でアルコール手指消毒をします。そして、マスクを取り外します。このとき、マスクのカバー部分にウイルスが付着しているかもしれないので、耳紐の部分に指をかけて、取り外すようにします。そして、再度アルコール手指消毒をします。使い捨てのマスクであれば、そのまま廃棄しますが、布マスクであれば洗濯します。

家族の誰も風邪症状がないからといって、油断できません。感染していても、無症状のことがあるからです。このとき、食事のときに最大の注意を払ってください。食事はマスクを外して、会話するときに口から飛沫を飛散させるというように、家庭内でのウイルス伝播の最も危険なタイミングだからです。そのため、受験生が家族と一緒に食事をしないように、時間をずらして食事をするように配慮します。そして、自宅内であっても、受験生の1m未満の距離に近付かない努力をします。1m未満に近付くときには、マスクを着用します。もちろん、手指消毒は行います。

(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)

〔文献〕
(1)Klompas M et al:Airborne transmission of SARS-CoV-2: Theoretical considerations and available evidence. JAMA 324(5):441-442, 2020. doi:10.1001/jama.2020.12458

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「うっかりやりがちな 新型コロナ感染対策の間違い15」「7日間できらりマスター 標準予防策・経路別予防策と耐性菌対策」,「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。