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2020.08.11 病原体

旅館・ホテル宿泊 温泉・大浴場でコロナうつる?―夏とレジャーとコロナ対策

著者:矢野 邦夫

旅館やホテルに行くと、温泉や大浴場が併設されていることがあります。そのようなところでゆったりとするのが旅行の醍醐味です。このような場合、旅館やホテルに到着したら、1回目の入浴をし、夕食を終えて、寝る前に2回目の入浴をします。そして、翌日の早朝に3回目の入浴というように、複数回の温泉や大浴場を楽しむ人も多いことでしょう。温泉や大浴場では感染のリスクはどこにあるのでしょう。

まず、温泉や大浴場の湯舟の水で新型コロナウイルスに感染することはありません。感染者が入浴することによって、お湯が汚染されて、感染するということは心配する必要はありません。また、温泉や大浴場の空間は広く、換気もよいので、空気の汚染を心配する必要もありません。第一、このウイルスは空気感染しないので、空気を吸い込むことによる感染はありません。

体を洗うのは、シャワーブースということになるのですが、隣のブースとの間に衝立が設置されていれば、隣に感染者が座ったとしても、飛沫が飛んでくる危険性はありません。しかし、衝立がなければ、一つ置きの席に座ることをお勧めします。

温泉や大浴場を利用するときに、新型コロナウイルスに曝露する最も危険なところが脱衣場です。ここではほとんどの人々がマスクを取り外していることでしょう。そして、比較的狭い部屋で多数の人々が衣類を脱いだり着たりしています。そこに感染者がいた場合、飛沫が飛べる範囲に他の人がいる状況となっています。ここで感染しない方法は、他の人と対面しないように、ロッカーや壁に顔面を向けて、衣類を脱ぎ着することになります。

ロッカーに自分の衣類を入れてもよいのか、と心配する人もいるかもしれません。感染者が着ていた衣類がロッカーに入れられ、ロッカーの内部にウイルスが付着し、そこに自分の衣類を入れることによって、衣類がウイルスに汚染するのではとの心配です。衣類もロッカーも環境表面としてカウントすると、「感染者⇒ドアノブ⇒自分」というように、1回の環境表面を介しての伝播はありえますが、「感染者⇒感染者の衣類⇒ロッカーの表面⇒自分の衣類⇒自分」というように、感染者から自分まで環境表面を3回経由してウイルスが伝播することはありません。ですから、ロッカーに衣類を入れても構いません。

(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)

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著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「7日間できらりマスター 標準予防策・経路別予防策と耐性菌対策」,「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。