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2020.07.03 病原体

こどもの「3大夏風邪」:ヘルパンギーナ

著者:森岡 一朗

Withコロナで、保育園・幼稚園が再開しました。これから、夏になると増えてくる感染症があります。こどもの三大夏風邪とも言われる「プール熱」、「手足口病」、「ヘルパンギーナ」です。 今回は、その中の「ヘルパンギーナ」の素朴な疑問に答えます。

■Q.ヘルパンギーナってなに?

ヘルパンギーナは、突然の発熱で始まり、口の中、特にのどの奥に小さな水ぶくれや潰瘍などの発疹ができるウイルス感染症です。

■Q.病原ウイルスはなんでしょう? 感染経路は?

原因となるウイルスは、主にコクサッキーウイルスです。感染経路は、感染者の咳、くしゃみ、唾液などの飛沫に含まれるウイルスによって感染したり(飛沫感染)、水疱の中身や便に排出されたウイルスが手などに付着し、それが口や眼などの粘膜に入って感染します。他人への感染をしやすい時期は発熱などの症状がある時ですが、便へのウイルスの排出は数週間続くとされ、症状がない時期でも感染する可能性があります。

■Q.どんな症状が出るの?

突然の発熱で発症し、幼少児では、しばしば40度を超える高熱がみられます。多くの場合、咽頭痛、嚥下痛、流涎(よだれ)を伴います。かなりののどの痛みがありますので、食事や水分を全く摂れなくなることもあります。およそ4分の1程度の乳幼児で嘔吐や腹痛がみられます。年長児では、頭痛がみられることもあります。口の中の所見が特徴的で、のどに1~2mm大の水疱や潰瘍が出現します。

■Q.治療はどうするの?

抗菌薬は効かないウイルス感染症のため、対症療法のみです。多くの場合、有熱期間は1~3日程度ですが、口の中の発疹による痛みは長引くことが多く、食欲低下がみられる場合には鎮痛剤を使用することがあります。脱水にならないように、こまめな水分摂取を行うことが大切です。

■Q.予防はどうするの?

日頃のうがいや手指の消毒を励行することがあげられます。流水と石けんで手洗いを十分に行うことも必要です。ヘルパンギーナの原因ウイルスはコクサッキーウイルス以外もあるため、繰り返しかかることがあります。

(著者:日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授 森岡 一朗)

著者プロフィール

森岡 一朗(もりおか いちろう)

日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授

日本小児科学会小児科専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医・指導医。日本小児科学会の理事、日本新生児成育医学会の理事・予防接種感染対策委員長を務める。専門は、新生児・小児感染症、新生児医学、小児の成長・発達。これらに関する英文学術論文を多く発表している。主な著書に、日常診療と看護ケアのためのNICU感染対策(ヴァンメディカル刊)、新生児学テキスト(メディカ出版刊)がある。