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2020.05.17 病原体

矢野邦夫タイムズ WHO COVID-19 ぷちREPORT No.11 COVID-19の流行とワクチン接種

著者:矢野 邦夫

COVID-19が流行していても、幼児の定期接種(BCG、4種混合ワクチンなど)は必須です。成人であっても、10月頃に始まるインフルエンザワクチンや高齢者での肺炎球菌ワクチンなどは必要です。それでは、COVID-19患者に接種してもよいのでしょうか? また、COVID-19に濃厚接触した人に接種してもよいのでしょうか? ワクチン接種について、WHOがFrequently Asked Questions (FAQ)を公開しているので、抜粋して紹介します(1)。

■Q.COVID-19患者(確定例または疑い例)にワクチン接種できますか?

A.現時点では、COVID-19患者にワクチン接種することの医学的禁忌はありません。しかし、COVID-19伝播のリスクを最小限に抑えるために、COVID-19患者(確定例または疑い例)は隔離されてケアされなければなりません。COVID-19患者(確定例または疑い例)が入院していない場合、予防接種を求める行為は周囲の人々への感染拡大を増加させる可能性があります。そのため、症状が改善するまで、できれば2回の連続したPCR検査(24時間間隔で実施)が陰性となるまで、ワクチン接種を延期します。PCR検査ができなければ、WHOは症状の改善後14日間はワクチン接種を延期することを推奨します。

COVID-19患者(確定例または疑い例)が入院している場合、適切な感染防止および管理措置が実施されているならば、退院前に回復していれば予防接種スケジュールに従ってワクチン接種しても構いません。

■Q.COVID-19の濃厚接触者にワクチン接種できますか?

A.COVID-19の濃厚接触者が入院していない場合、COVID-19ウイルスが周辺の人々に伝播するリスクを最小限に抑えるために、最初に14日間の自己隔離をします。そして、14日間の自己隔離してもCOVID-19の症状がみられなければ、ワクチン接種を受けることができます。

濃厚接触者が入院中であれば、適切な感染防止および管理措置が実施されているならば、退院前に回復していれば予防接種スケジュールに従ってワクチン接種しても構いません。

■Q.COVID-19に有効なワクチンはありますか?

A.現時点で、70を超えるワクチン候補が開発中であり、2020年3月には実験用ワクチンを使用した最初の臨床試験が開始されました。ウイルスのゲノム配列決定からワクチン開発までわずか60日しか経過していないのは、史上初めてです。しかし、WHOは、これから18ヵ月以内にCOVID-19に対して安全で効果的なワクチンを入手できるとは考えていません。

(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)

〔文献〕
(1)WHO:Immunization in the context of COVID-19 pandemic.
https://www.who.int/publications-detail/immunization-in-the-context-of-covid-19-pandemic

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。