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2020.05.12 領域・分野別

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下での乳幼児健診と予防接種

著者:森岡 一朗

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行の拡大のために、「密」を避けるという観点から、集団で行う乳幼児健康診査(健診)が中止や延期の状況となっています。また、乳幼児で行う予防接種も自発的に延期されている家庭も増えていると思われます。乳幼児健診と予防接種の延期は、小児医療におけるコロナ禍とも考えられます。

■1.成長発達の確認には母子健康手帳の活用を

成長や発達の遅れから、診断がつき治療が行われる小児疾患は多くあります。乳幼児健診は、定期的な乳幼児の健康状態や成長発達を確認するための重要な機会です。COVID-19の流行が収まり、健康診査が早期に行える状況になればいいですが、長期化する場合は、母子健康手帳を有効に利用するのがいいでしょう。母子健康手帳にはその月齢や年齢における成長や発達の目安が記載されています。それを活用し、子供の成長や発達に心配がある場合は、かかりつけ医への相談や地域の保健師への個別相談をお勧めします。ただし、地域や自治体によって、新型コロナウイルスの流行状況や保健所などの業務状況が異なり、対応可能な範囲が異なることがありますので、注意しましょう。

■2.できる限りワクチン接種を

乳幼児期にワクチンを接種することにより、多くの重篤な感染症から子供が守られています。現在ワクチンのあるインフルエンザ菌、肺炎球菌、麻疹ウイルスなども実際に罹患し、髄膜脳炎など重篤な急性疾患を引き起こすと入院治療が必要になります。このように、新型コロナウイルスも怖い感染症ですが、ワクチンで予防できる病原体による感染症も実際に健康被害を引き起こします。かかりつけ医へ相談し新型コロナウイルス感染の予防策をとりながら、適切な月齢や年齢でワクチン接種の機会を逃さないことも重要です。

著者プロフィール

森岡 一朗(もりおか いちろう)

日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授

日本小児科学会小児科専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医・指導医。日本新生児成育医学会の理事・予防接種感染対策委員長を務める。専門は、新生児・小児感染症、新生児医学、小児の成長・発達。これらに関する英文学術論文を多く発表している。主な著書に、日常診療と看護ケアのためのNICU感染対策(ヴァンメディカル刊)、新生児学テキスト(メディカ出版刊)がある。