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2020.04.20 病原体

矢野邦夫タイムズ WHO COVID-19 ぷちREPORT No.1 COVID-19患者のウイルス量

著者:矢野 邦夫

「COVID-19患者はどの時点からウイルスを排出させるのか?」という疑問があります。これについては欧州CDCのガイダンスに記載されています(1)。ウイルスRNAは発症の1~2日前から気道から検出されます。軽症患者ではウイルスの排出は発症後8日まで続き、重症では11日目にピークが来ます。SARS-CoV-2(COVID-19の原因ウイルス)はインフルエンザに似ていて、発症の時点に排出のピークがあります(SARS-CoV-1 やMERS-CoVでは発症後2週目でピークがありました)。高齢者や重症患者ではウイルス量が多いことが知られています。糞便では、ウイルスRNAは発症後5日目から検出され、中等症の患者では4~5週まで検出されます。血液、唾液、尿でも同様です。

ウイルス量は重症度と予後の評価に有用な指標かもしれません。最近の研究によると、重症患者のウイルス量は軽症患者よりも60倍高かったのです。しかし、ウイルスRNAの排出と感染性は比例しません。感染量(infectious dose)も決定されていないので、ヒトに感染するためにはどのくらいのウイルス量が必要かは不明です。

無症状の患者では、感染性ウイルスおよびウイルスRNAが検出されます。有症状の患者では、発症の時点で高いウイルス量がみられ、感染早期にウイルスが容易に伝播することが示されています。有症状と無症状の患者のウイルス量は同程度なので、無症状患者からのウイルス伝播の可能性はあります。

〔文献〕
(1)European CDC:Guidance for discharge and ending isolation in the context of widespread community transmission of COVID-19 – first update.
https://www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/documents/covid-19-guidance-discharge-and-ending-isolation-first%20update.pdf

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。