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2021.07.01 病原体

2021年夏 こどもの「3大夏風邪」:手足口病

著者:森岡 一朗

夏になると増えてくる感染症があります。こどもの3大夏風邪とも言われる「プール熱」、「手足口病」、「ヘルパンギーナ」です。今回は、「手足口病」について述べます。

コクサッキーウイルスやエンテロウイルスによる感染症で、口腔粘膜と手足の末端に水疱性発疹を生じる疾患です。手足口病を起こすウイルスには複数の種類がありますので、何度もかかります。症状は、発熱(約3分の1程度の患児にみられる)と喉の痛みを伴う水疱が口腔内にでき、唾液が増え、手・足末端やおしりなどに水疱がみられるのが特徴です。コクサッキーウイルスA6などによる手足口病では、水痘と間違えられるほどの発疹が出たり、爪がはがれることもあります。多くは3~7日の自然経過で治癒します。しかし、発熱、頭痛、嘔吐がある場合は、髄膜炎が合併していることがありますので、小児科の受診が必要です。まれですが、脳炎を合併して、けいれんや意識障害を起こすこともあります。

感染経路は、飛沫感染や接触感染、経口感染(便の中に排泄されたウイルスが口に入って感染すること)です。乳幼児では原因となるウイルスに今まで感染した経験のない児の割合が高く、保育園・幼稚園では濃厚に接触する機会が多いため発症しやすいです。2020年は、手足口病の流行がとても小さかったことから、例年以上に未感染児が多いと想定され、2021年は大きな流行にならないか心配です。

予防のためのワクチンはありませんので、保育園・幼稚園での感染拡大防止策は、経口感染対策、飛沫感染対策、接触感染対策として、一般的な予防法の励行が大切です。流行阻止を目的とした登園停止は有効性が低く、また、ウイルス排出期間が長いことからも現実的ではありません。発熱や喉の痛み、下痢のある期間は登園を控えて、全身状態が安定してから登園を再開してください。ただし、その後も排便後やおむつ交換後の手洗いの徹底が重要です。

(著者:日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授 森岡 一朗)

著者プロフィール

森岡 一朗(もりおか いちろう)

日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授

日本小児科学会小児科専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医・指導医。日本小児科学会の理事、日本新生児成育医学会の理事・予防接種感染対策委員長を務める。専門は、新生児・小児感染症、新生児医学、小児の成長・発達。これらに関する英文学術論文を多く発表している。主な著書に、日常診療と看護ケアのためのNICU感染対策(ヴァンメディカル刊)、新生児学テキスト(メディカ出版刊)がある。