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2021.06.01 病原体

思わずツッコミたい新型コロナ対策 同僚・友人同士のマスク無しトーク

著者:矢野 邦夫

同僚や友人と一緒の場合、マスクを着用する必要がないと考える人が多いようです。実際、同僚や友人と一緒に飲食店に入ると、同じテーブルに座り、着席と同時に、先ずマスクを外して会話をはじめます。道端での立ち話や公共機関の車内でも、小グループが顎マスクや片耳マスク(耳ひもを片耳にだけ引っかけて、マスクをプラプラさせる)で会話するのをよく見かけます。大勢のいる場ではマスクを付けているのに、同僚や友人といった小グループになった途端、マスクを外すのです。若い世代での感染が増加しているのは、これが一因である可能性があると考えます。

新型コロナウイルスに感染した人の40%以上が無症状です。そして、「発症前の感染者(感染を伝播した時点では症状がないが、後で症状を経験する人)」および「無症候性感染者(全経過を通じて症状を経験しない感染者)」からの感染が、すべての感染の50%以上を占めると推定されています(1)。すなわち、目の前にいる元気な同僚や友人は、口や鼻からウイルスを放出しているかもしれません。同時に、何ら症状が見られない貴方自身が、ウイルスを同僚や友人に浴びせているかもしれないのです。そのため、無症状の人であっても、感染者である可能性があるので、常にマスクを着用することが大切です。これをユニバーサル・マスキングと言います。それでは、ユニバーサル・マスキングはどの程度有効なのでしょうか? 米国の事例ですが、新型コロナウイルスに感染したヘアスタイリスト2人が、ヘアサロンで139人のクライアントと15〜45分の濃厚接触をしました。全員がマスクを着用していたので、誰も感染しなかったのです(2)。

同僚や友人だからといって、新型コロナウイルスを感染させ合うことは避けるべきです。また、そのような人々から貴方が感染し、家庭内に持ち込み、大切な同居家族に感染させるのも回避すべきです。現在、英国型やインド型といった感染力の強い変異株が国内で流行しています。そのため、顔面にフィットしたマスクを用いたユニバーサル・マスキングが最も求められているのです。

(著者:浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野 邦夫)

〔文献〕
(1)Honein MA et al:Summary of guidance for public health strategies to address high levels of community transmission of SARS-CoV-2 and related deaths, December 2020
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/pdfs/mm6949e2-H.pdf
(2)Hendrix MJ et al:Absence of apparent transmission of SARS-CoV-2 from two stylists after exposure at a hair salon with a universal face covering policy — Springfield, Missouri, May 2020
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/pdfs/mm6928e2-H.pdf

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「がっちり万全な 新型コロナ感染対策 受験編20」「ばっちり安心な 新型コロナ感染対策 旅行編20」「うっかりやりがちな 新型コロナ感染対策の間違い15」「7日間できらりマスター 標準予防策・経路別予防策と耐性菌対策」「救急医療の感染対策がわかる本」「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(以上、ヴァン メディカル刊)など。