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2021.03.23 病原体

保育園での感染症の心構え―4月の入園に備えて

著者:森岡 一朗

新型コロナウイルスの流行は、国民の衛生意識を大きく変化させました。学校や保育園では感染対策が厳重に行われ、今まで流行が見られていた小児感染症、例えばインフルエンザやRSウイルス感染症などの流行の抑制をもたらしました。3月21日に緊急事態宣言が終了すると、いよいよ人は動きはじめます。4月からお子さんを保育園に入園させるご家庭も多いことでしょう。そうなると、気になるのが、「うちの子は感染症にかからないかしら」という心配だと思います。

保育園は毎日長時間にわたり集団生活をする場です。昼寝や食事、遊びなど、濃厚接触する機会も多く、飛沫・接触感染は容易に起こります。また、乳児にいたっては、床を這い、何でも舐め、口に入れます。もちろん、正しいマスクの着用や適切な手洗いなどはできないので、基本的な感染対策が十分にできないということも理解できると思います。また、患児自身はほぼ症状が消失してもウイルスを排出していることがありますので、症状回復後すぐに登園した場合、ウイルスが周囲に伝播してしまう可能性があります。このような状況ですので、ひとたび、ロタウイルスやノロウイルスによる消化管感染症やRSウイルスによる気道感染症など、なんらかの感染症が侵入すると園内で感染が広がってしまいます。

臨床現場ではよく、「保育園に行き始めたら、毎月のように熱を出し、休んでばかりだ」と言われる保護者に遭遇します。もちろん合併症には注意が必要ですが、子どもはこの過程を経てその感染症に対する免疫をつけることも事実です。保育園の場では、感染対策の努力をしていても、様々な感染症の侵入を100%阻止することは不可能である、ということも理解していただきたいと思います。保育園では感染症が発生した場合に、その流行の規模を最小限にすることを目標として対策を実施しています。

(著者:日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授 森岡 一朗)

著者プロフィール

森岡 一朗(もりおか いちろう)

日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授

日本小児科学会小児科専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医・指導医。日本小児科学会の理事、日本新生児成育医学会の理事・予防接種感染対策委員長を務める。専門は、新生児・小児感染症、新生児医学、小児の成長・発達。これらに関する英文学術論文を多く発表している。主な著書に、日常診療と看護ケアのためのNICU感染対策(ヴァンメディカル刊)、新生児学テキスト(メディカ出版刊)がある。