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2021.01.19 病原体

ノロウイルスと新型コロナウイルスの感染対策の違い

著者:森岡 一朗

新型コロナウイルスの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。感染者の咳やくしゃみ、咳やくしゃみなどの症状がなくても、閉鎖した空間において近距離で多くの人と会話するなどの飛沫で感染するので、マスク着用、密閉・密集・密接の3密を避ける、換気、ソーシャルディスタンスなどの対応が有効となります。また、手や身の回りのものに付着した新型コロナウイルスと接触し、それが口や鼻、眼などから入って感染します。したがって、石けんと流水による手洗いやアルコールによる手指消毒の対応をとります(アルコール消毒は効果があります)。

では、ノロウイルスも同じでしょうか? ノロウイルスの主な感染経路は、経口感染、接触感染、塵埃(じんあい)感染(一種の空気感染)です。ノロウイルス感染症は嘔吐と下痢が主症状であり、嘔吐物や糞便中には多くのウイルスが排出されています。嘔吐物が乾燥して空気中に舞い上がった微細な粒子(エアロゾル)から塵埃感染も起こりますので、不十分な汚物処理により容易に集団感染を引き起こします。したがって、石けんと流水による手洗いの徹底と嘔吐物・下痢の汚物の迅速な対応が重要です。

ノロウイルスの感染対策において、知っておくと良いことを2つあげます。
1.手指衛生としての速乾性擦り込み式手指消毒剤やアルコール消毒は無効です。そのため、手洗いは流水と石けんで行う必要があります。
2.感染者が嘔吐している時や下痢のおむつ交換の時など、直接曝露する可能性がある場合は、通常の使い捨てマスク、可能ならサージカル(医療用)マスクを着用します。しかし、エアロゾル化した塵埃感染は、通常のマスクでは防げませんので、N95 マスクを使用する必要があります。
ノロウイルスと新型コロナウイルスの感染対策では、「マスク着用」や「手洗い」のように言葉自体は同じでも、考え方や実際の対応は異なることに注意が必要です。

(著者:日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授 森岡 一朗)

著者プロフィール

森岡 一朗(もりおか いちろう)

日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授

日本小児科学会小児科専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医・指導医。日本小児科学会の理事、日本新生児成育医学会の理事・予防接種感染対策委員長を務める。専門は、新生児・小児感染症、新生児医学、小児の成長・発達。これらに関する英文学術論文を多く発表している。主な著書に、日常診療と看護ケアのためのNICU感染対策(ヴァンメディカル刊)、新生児学テキスト(メディカ出版刊)がある。