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2021.01.18 病原体

ノロウイルス感染症の動向 緊急事態宣言の終了後が注意!

著者:森岡 一朗

新型コロナウイルスの流行は、国民全体に手指衛生やマスク着用、3密を避ける、ソーシャルディスタンスなどの感染対策を行いながら生活・行動をする、という変化をもたらしました。学校や保育園においても同様に、衛生に関する意識はさらに高まり、このような感染対策が厳重に行われることになりました。その結果、今まで流行が見られていた小児感染症、例えばインフルエンザやRSウイルス感染症などの流行を抑制する、という大きなインパクトをもたらしました。

そのような中でも、例年ほどではないものの、感染力の強いウイルス感染症は発症が見られています。その代表がノロウイルス感染症です。ノロウイルスは、感染力が強く、100 個以下という少量のウイルスでも、人に感染し発病します。患者の嘔吐物や糞便には 1 グラムあたり 100万~10 億個ものウイルスが含まれていると言われています。主に、手指を介して経口感染を起こしていきます。秋から冬にかけて流行します。

東京都感染症情報センターの定点報告を見ると(1)、ロタウイルスを除く感染性胃腸炎の報告は、新型コロナウイルスの第1波の流行で緊急事態宣言発出中の2020年の4月下旬(第18週)には227人でしたが、2020年の12月上旬(第51週)には848人に増加しています。ノロウイルスの流行期に入ると、増加しているのがわかります。1年前の2019年の12月上旬(第51週)は2,639人でしたので、例年に比べると少ないのですが、コロナ禍の中でも多く発症しています。

2021年1月17日現在、東京都を含む11都府県では再びの緊急事態宣言のため、より一層、感染対策が徹底されていると思います。そのため、今後、ノロウイルス感染症も減少する可能性があります。しかし、緊急事態宣言が終了し、感染対策が少しでも緩むと、感染力の強いノロウイルスが流行する可能性があります。新型コロナウイルス感染症の動向が注目されていますが、この新型コロナウイルスが少し落ち着いた後こそ、注意しておかないと、ノロウイルス感染症が流行するかもしれません。

(著者:日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授 森岡 一朗)

〔文献〕
(1)東京都感染症情報センター:https://survey.tokyo-eiken.go.jp/epidinfo/weeklyhc.do(2021年1月17日アクセス)

著者プロフィール

森岡 一朗(もりおか いちろう)

日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授

日本小児科学会小児科専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医・指導医。日本小児科学会の理事、日本新生児成育医学会の理事・予防接種感染対策委員長を務める。専門は、新生児・小児感染症、新生児医学、小児の成長・発達。これらに関する英文学術論文を多く発表している。主な著書に、日常診療と看護ケアのためのNICU感染対策(ヴァンメディカル刊)、新生児学テキスト(メディカ出版刊)がある。