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2021.01.12 領域・分野別

コロナ禍の一年の始まりに気が重いあなたへ

著者:伊藤 克人

コロナ禍で新年を迎え、昨年からの不安な日々が続きます。不安と一言で言っても、感染に対する不安だけではなく、これまで何事もなく続けてきた生活を変えざるを得ない不安など、様々なものがみられます。そのような不安とどう向き合っていったらよいでしょうか。

感染に対する不安に対しては、感染経路が喉から気管・肺へ侵入するもの、鼻・口や目の粘膜から侵入するものの2系統ということをしっかり覚えて、それをブロックしているという“実感”を持って生活しましょう。それにはマスクの着用と、飲食などでマスクを外した時に手指で顔を触らない、という2点が重要です。またお店などの密な空間から出るときにこそ、手指の消毒が大切です。

さて、次に私たちの普段の生活に目を向けてみましょう。コロナ禍の中で、いろいろな変化がみられます。リモートワークやリモート講義、また旅行や外出、親しい人との会合の制限などがありますが、振り返ってみれば“仕方なく”そのような変化を受け入れている自分に気づきます。しかし時にはこの不自由さがいつまで続くのだろう、と思うこともあるでしょう。それに伴って不安になったり憂うつになったり、という気持ちも生まれます。しかし先を知って安心しようとしたり、あえて楽観的な気持ちを持とうとしても、それは難しいことです。

私が専門にしている森田療法では「不安常住」という言葉を使って、人は不安とともに生きるといいます。不安をなくそうとすると心の悪循環が働いて、一層不安がつのります。そこで不安はあるがままにして、自分の感性に心を向けましょう。やりたい、見たい、行きたい・・・といったことを感じたら、コロナ禍の制約の範囲で実際に動いてみると、心も流動していきます。不安に固着した心が動くことはとても大切です。コロナ禍での制約があっても、その範囲で自分らしくやっていく、コロナ禍で生きる私たちの眼の向けどころはそこにあります。

(著者:東急病院心療内科 健康管理センター所長 伊藤 克人)

著者プロフィール

伊藤 克人(いとう かつひと)

東急病院心療内科 健康管理センター所長

心身医学(日本心身医学会内科専門医)、産業医学(労働衛生コンサルタント)、森田療法(日本森田療法学会認定医)が専門。筑波大学を卒業後、東京大学心療内科を経て1986年から東急病院での診療、東急ならびにグループ会社の産業医業務を行う。平易に説明した森田療法を「MORITA」と名付け、近著「いちばんわかりやすい過敏性腸症候群(河出書房新社)」でとりあげる。専門用語を使わない森田療法の話として、ご興味のある方はご一読を。その他、著書、監修書は多数あるが、現在は主に「自律神経失調症」や「過敏性腸症候群」の関連書籍。