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2020.12.28 病原体

初詣で気をつけるべきこと―新型コロナ感染対策

著者:矢野 邦夫

初詣では多くの人々が参拝します。そこでは身体的距離(1.5m)を確保することは困難なので、マスクを着用することが必須となります。しかし、周囲に数多くの人がいて、雑音も多いことから、家族や友人などと参拝するときには、お互いに大きな声で話しかけざるを得ません。そのとき、声が通るようにマスクを外したり、マスクを下に移動することは避けましょう。飛沫が周囲に飛散するからです。

賽銭箱の上につるされているガラガラの鈴の部分のことを「本坪鈴(ほんつぼすず)」と言います。例年では多くの人々が賽銭したあとに、本坪鈴を鳴らしていることと思います。しかし、今年は鳴らすことを止めた方がよいでしょう。鳴らすためには、本坪鈴をから伸びている綱を引っ張って揺らす必要があります。その綱には数多くの人々の手指が触れているからです。どうしても、鳴らしたい方はその後に手指消毒します。また、お参りするときに手水舎(てみずしゃ)の手水(てみず)で手や口をすすぐことがありますが、このとき柄杓(ひしゃく)の柄の部分を持つことになります。そこもまた、多くの人々の手指が触れるところなので、やはり、今年は、手水舎の水を使って身を清めることはやめましょう。実際には、多くの神社では本坪鈴を鳴らさず、手水を使用しないように感染対策を強化しているところが多いと思います。また、一方向に人々が流れ、混雑しない配慮もされています。

参道には多数の出店が出ていることがあります。このとき大切なことは出店などで食べ物を購入し、友人と歩きながら食べる行為をしないことです。一緒に食べながら歩けば、飛沫が飛び交うからです。初詣に行く途中も満員の交通機関に乗車することになります。ここでも身体的距離を確保することは困難なので、マスクの着用は必須です。また、参拝や往復では気づかないときに、様々な環境表面に触れているので、手指消毒は必須です。そのため、アルコール手指消毒薬を携帯しましょう。

高齢者や基礎疾患のある方は人混みには入り込んでほしくありません。感染すると重症化する危険性があるからです。そのため、今年に限っては、初詣は遠慮していただきたいと思います。来年に2回分の初詣をしましょう。

(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「がっちり万全な 新型コロナ感染対策 受験編20」「ばっちり安心な 新型コロナ感染対策 旅行編20」「うっかりやりがちな 新型コロナ感染対策の間違い15」「7日間できらりマスター 標準予防策・経路別予防策と耐性菌対策」「救急医療の感染対策がわかる本」「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(以上、ヴァン メディカル刊)など。