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2020.12.09 病原体

新型コロナウイルス感染症の後遺症

著者:永井 英明

新型コロナウイルス感染症は終息する気配を見せていません。現時点(2020年12月5日)までの感染者数は135,032人、死亡者数は2,327人です。若年者~中年者は軽症で済むことが多いので、「風邪」程度に考えている人もいます。たしかに重症例は高齢者が多いですが、最近、新型コロナウイルス感染症から回復後でも、症状が長期にわたり残る人がいることが解ってきました。

日本からの報告では、咳、倦怠感、息切れ、味覚障害、嗅覚障害が発症後60日後、120日後にも見られている人がいます。嗅覚障害や脱毛はだいぶ遅れてから出現する症例もあるようです。

イタリアからの報告では、発症後60日後にもかかわらず、87.4%の人に1つ以上の症状が残っていました。倦怠感が最も多く、息切れ、関節痛、胸痛、咳が上位を占めました。

英国からの報告では、退院後4週~8週後でも、倦怠感、息切れ、精神的苦痛などが見られ、フランスからの報告でも、入院時から110日経過した退院者に、倦怠感、息切れ、記憶障害、睡眠障害などが見られています。

以上のように、退院して長期間経過しても後遺症が残る例が多く、代表的な後遺症は倦怠感と息切れです。これよりも少ない頻度ですが、多彩な症状が残ると報告されています。これらの症状がなぜ長期間残るかや、どのようにしたら治せるかは解っていません。したがって、治すことができず、長期間後遺症に苦しみ、仕事もできなくなっている人もいます。新型コロナウイルス感染症についてはまだまだ解らないことがたくさんあるのです。国民全員が感染して抗体ができれば流行が収まるのでそれを待つという発想も、後遺症のことを考えればいかがなものでしょう。

若い人は軽く済む、「風邪」のようなものだ、と考えるのはきわめて危険なのです。重症化しやすい高齢者だけでなく、どの年代の人も新型コロナウイルス感染症には罹らないようにすべきです。この後遺症については、とくに若い人には知っていただき、慎重な行動をとっていただき、自らも罹らない、高齢者に移さない努力をしてもらいたいものです。

(著者:国立病院機構東京病院 感染症科部長 永井 英明)

著者プロフィール

永井 英明(ながい ひであき)

国立病院機構東京病院 感染症科部長

日本結核・非結核性抗酸菌症学会(理事・指導医)、日本呼吸器学会(専門医・指導医)、日本感染症学会(専門医・指導医・ICD)、日本エイズ学会(認定医・指導医)などに所属。専門は呼吸器一般、抗酸菌症、感染症、緩和ケア。多摩府中保健所感染症協議会委員長、東京都医師会感染症予防検討委員会委員、東京iCDC専門家ボード委員などを兼任している。