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2020.05.19 病原体

矢野邦夫タイムズ WHO COVID-19 ぷちREPORT No.12 COVID-19と小児多臓器系炎症性症候群

著者:矢野 邦夫

最近、ヨーロッパおよび北米から、川崎病に類似した多臓器系炎症性症候群が報告されています。これについて、WHOが暫定的な症例定義を提示しているので紹介します(1)。

ヨーロッパおよび北米から、川崎病やトキシックショック症候群に似た多臓器の炎症状態によって、集中治療室への入院を必要とする小児や青年のクラスターが報告されています。この症候群はCOVID-19に関連している可能性があります。そのため、WHOは、小児および青年における多臓器系炎症性症候群の症例定義を開発しました。この暫定的な症例定義は、これまでに報告された小児で観察された臨床的および検査上の特徴を反映しており、治療の提供と暫定的な報告および監視の両方の目的で症例を識別するのに役立ちます。この暫定的な症例定義は、さらに多くのデータが入手されることによって改訂されます。

■暫定的な症例定義

0〜19歳の小児および青年で、3日以上の発熱がみられる。

かつ

下記のうち2つがある。

  1. 発疹または両側性の非化膿性結膜炎または粘膜皮膚の炎症症状(口、手、足)がある。
  2. 血圧低下もしくはショックがみられる。
  3. 心筋機能障害、心膜炎、弁膜炎、または冠動脈異常(エコー所見またはトロポニン/ NT-proBNPの上昇など)の所見がある
  4. 凝固障害のエビデンス(PT、PTT、d-ダイマーの上昇)がある。
  5. 急性胃腸障害(下痢、嘔吐、または腹痛)がある

かつ

ESR、CRP、プロカルシトニンなどの炎症マーカーが上昇している。

かつ

炎症を引き起こす原因として他の明らかな微生物はない(細菌性敗血症、ブドウ球菌性または連鎖球菌性ショック症候群など)。

かつ

COVID-19のエビデンスがある(RT-PCR、抗原検査、血清検査が陽性)、またはCOVID-19患者との接触の可能性がある。

(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)

〔文献〕
(1)WHO:Multisystem inflammatory syndrome in children and adolescents temporally related to COVID-19.
https://www.who.int/news-room/commentaries/detail/multisystem-inflammatory-syndrome-in-children-and-adolescents-with-covid-19

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。