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2020.05.13 病原体

矢野邦夫タイムズ WHO COVID-19 ぷちREPORT No.7 COVID-19接触者調査の暫定ガイダンス

著者:矢野 邦夫

WHOがCOVID-19における接触者調査の暫定ガイダンスを公開しているので、そのポイントを紹介します(1)。

COVID-19の流行を制御するには、人から人への感染の連鎖を断ち切り、各々の確定患者から発生する新規の患者数が1未満に維持されるように介入することが大切です(実効再生産数<1)。患者の特定、隔離、検査とケア、および接触者調査と検疫隔離が、COVID-19の伝播を減らして流行を制御するために重要な対策であると言えます。

接触者調査は、感染症に曝露した人を特定、評価、管理して、それ以降の病原体の伝播を防ぐためのプロセスです。接触者調査は感染症の伝播の連鎖を断ち切り、そして、感染症のアウトブレイクを制御するための不可欠な公衆衛生ツールです。COVID-19の接触者調査では、COVID-19に曝露した可能性のある人を特定し、最後の曝露時点から14日間毎日フォローアップします。感染者は発症前または無症候性の間にCOVID-19を伝播する可能性があるので、このガイダンスでは、二次感染の可能性をさらに減らすために、接触者を検疫隔離することの重要性も強調しています。

■接触者の定義

接触者とは、発症の2日前から14日後までにCOVID-19患者に下記のような接触をした人と定義されます(ただし、地域でのリスク評価によって異なる定義が追加的に発生することはあります)。

確定患者が無症候性である場合、症状のある患者と同じ方法で接触者を管理します。その時の曝露期間は患者がサンプリングされる2日前から14日後までとなります。

■検疫隔離

検疫隔離(quarantine)とは、症状を監視し、患者を早期に発見することを目的とした、病気ではないが感染性物質または疾患に曝露した可能性のある人の活動を制限したり、そのような人を他の人から分離することです。検疫隔離は、発症者もしくは感染者を他の人から分離する隔離(isolation)とは異なります。

〔文献〕
(1)WHO:Contact tracing in the context of COVID-19.
https://www.who.int/publications-detail/contact-tracing-in-the-context-of-covid-19

 

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。