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2020.03.27 病原体

【Q&A】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と2009年新型インフルエンザのパンデミックは何がどう違うのでしょうか?

著者:渡辺 彰

2020年3月末現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界的なパンデミックの段階に入りました。2009年の新型インフルエンザのパンデミックとは何がどう違うのでしょうか? 最大の違いは好発年齢の違いです。COVID-19が若年者には少なくて高齢者ほど感染しやすく重症化しやすいのに対し、2009年の新型インフルエンザはもっぱら若年者に感染者/重症例が多く見られました。なぜでしょうか? 免疫の面から説明できます。

2009年の新型インフルエンザのウイルスは、1918年のスペインかぜのウイルス(A/H1N1)に近いウイルスでした。1918年以降にこのA/H1N1に感染して免疫を確立した集団は2009年頃には高齢となっていましたが、この免疫が2009年のウイルスにも交差活性を持っていたために高齢者は感染しにくく重症化しにくかったのです。COVID-19はどうでしょうか?

COVID-19のウイルス(SARS-CoV-2)は人類の皆が未経験ですから、特異免疫を誰も持っていません。ただ、免疫全体の機能が未熟な小児などはこのウイルスに感染してもあまり反応しない(≒症状が出にくい)のに対し、免疫機能が確立した成人は反応し(≒症状が出る)、さらに、種々の基礎疾患を持つ高齢者ほど重症化しやすく死亡率も高くなる、と考えられます。急性期の早期から綿密な対応が必要になりますが、このパンデミックはいつまで続くのでしょうか?

COVID-19では無症候の感染者が多く存在することから、感染の波及を封じ込めることは見込めません。免疫抗体保有者が多くなれば蔓延はそこでようやく落ちつくと考えられますが、例えば過半数の人が免疫を持つまでの期間はどの程度なのか? 現時点では全く読めません。ただ、感染が広がるスピードは2009年の新型インフルエンザよりは遅いようです。しかし、季節性はあまりなさそうですから、1~2~3年は流行が持続しそうです。多くの人が免疫を持ってからは、通常のかぜよりやや重症化しやすい感染症として散発的な発生が起こる形に落ち着くのではないか? と考えています。

著者プロフィール

渡辺 彰(わたなべ あきら)

東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授 公益財団法人宮城県結核予防会 理事長

日本感染症学会専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会指導医。東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発寄附研究部門教授・日本感染症学会理事・日本結核病学会理事長・日本化学療法学会理事長を歴任。2013年、結核医療とインフルエンザ医療に関する貢献で第65回保健文化賞,2017年、抗インフルエンザ薬の臨床開発とインフルエンザ感染症対策の推進への貢献で日本化学療法学会の第28回志賀 潔・秦 佐八郎記念賞を受賞している。