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2020.03.27 領域・分野別

今さら聞けない! 標準予防策 ②個人防護具の使用

著者:矢野 邦夫

「個人防護具」はPPE(personal protective equipment)とも呼ばれ、手袋、ガウン、マスク(サージカルマスクやN95マスク)、ゴーグル、フェイスシールドなどが含まれます。個人防護具は粘膜、気道、皮膚、衣類に病原体が付着するのを防ぐために用いられ、単独で用いることもありますが、組み合わせて用いることもあります(「サージカルマスク+フェイスシールド」など)。標準予防策においては、個人防護具を使用するかどうか、また、どの個人防護具を使用するかの判断は、これから行う医療行為から予想される曝露に左右されます。例えば、採血の時には手指が血液に汚染する可能性があるので、手袋を着用します。重症交通事故の患者での救急処置では広範囲な血液曝露の可能性があるので、ガウン、手袋、ゴーグル、マスクが必要となります。

個人防護具は適切に着脱することが大切です。特に、取り外す時には自分自身や周辺環境を汚染させないようにします。米国疾病管理予防センター(CDC)は着用する順番を「①エプロンやガウン、②マスク、③ゴーグルやフェイスシールド、④手袋」としています。手袋は患者の体に直接触れる可能性が高く、できるだけ清潔を守りたいので、一番最後に装着します。ゴーグルを装着した状態でエプロンやマスクを着けることは難しいので、ゴーグルはエプロンとマスクの後に装着します。プラスチックエプロンなどは頭をくぐらせるようにして着るので、マスクをした状態でエプロンを着ることは困難です。そのため、エプロンを先に着用します。

個人防護具を取り外す順番は、「①手袋、②ゴーグルやフェースシールド、③“エプロンやガウン、④マスク」となります。手袋は病原体で最も汚染している個人防護具なので最初に取り外す必要があります。もし、手袋を装着したままマスクやガウンなどの個人防護具を取り外そうとすると、手袋に付着している病原体が他の部位に付着してしまうからです。マスクを病室内で取り外すと、飛沫や飛沫核を吸い込んでしまう危険性があるので、マスクは室外に出てから取り外します。したがって、マスクは個人防護具の中では最後に取り外すことになります。ゴーグル、フェースシールド、エプロン・ガウンについては汚染の厳しいものを最初に取り外すのを原則とします。個人防護具を用いた時には、それらを脱ぐ時に自分自身や周囲環境を汚染させないようにします。そのためには、個人防護具を一つ取り外すたびに、手指衛生を行います。また、すべての個人防護具を取り外した後にも、念入りな手指衛生を再度行います。

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。